2.11.2.4 トリガー抵抗とレバーの長さ 

 我々はトリガー抵抗の大きさがレストの形状と位置、摩擦力、コック部品と打撃部品に作用するスプリングの力に依存しているということを見てきた。設計者はさらにレバーの長さの選択によってもトリガー抵抗を変えることができる。図2.11.6はこのことを全く単純な例ではっきりさせることを意図している。トリガーとコック部品はこの場合、リボルバーの場合のようにトリガー本体と一体化されている。a)ではトリガー本体のレストアームが小さく、力をかけるアーム(トリガー)は大きい。てこの原理により、ハンマーをレットオフさせるためにはトリガーに小さな力を大きなルートに沿って作用させる必要がある。b)ではレストアームが長く、力をかけるアームが短い。この場合それに応じてトリガー抵抗は大きくなり、レットオフ時に後退するトリガーのルートは短く、「ドライなトリガー」になる。トリガーとコック部品の間にトリガーバーがあると、その両方がツーピースのてことして作用する。設計者はその長さの変更によってトリガー抵抗を必要に適合させることができる。



図2.11.6 レバーの長さはトリガー抵抗に影響する

 トリガー抵抗を計測したい時は、あらかじめ計測位置とトリガーへの力が作用するべき方向をはっきりさせておかなくてはならない。トリガー抵抗をトリガーの回転ポイントの近くで計測すると、例えばその端部で計測した場合よりも高い数値が見いだされる。パラレルに動くトリガーの場合は計測位置に左右されない数値が得られる。図2.11.7はそのようなトリガーの原理を示している。

 フレーム(1)には両回転アーム(4)および(5)が、前は(2)、後ろは(3)をめぐってスイング可能に収納されている。この回転アームは軸を収納する部品(6)および(7)によってバー(8)と結合されている。このバーにはトリガー(9)が前後方向に調節可能に固定されている。トリガーはバーごとダブル矢印方向に前後動できる。トリガーに課された力は(7)の右にあるタペットの突出によってトリガーシステムに伝達される。伝達される力は射手が圧するトリガーの位置に左右されない。



図2.11.7 パラレルトリガーの原理

 パラレルトリガーは射手にとってのトリガー抵抗をコンスタントに保つことに決定的に寄与する。というのはそもそもどんな射手がトリガーの常に同じ位置を引くだろうか? ファインベルクバウのエアピストル モデル80および90はパラレルトリガーを装備している。フレーム内でスライドする配置のトリガー、例えばコルトガバメントモデルピストルは力を課す位置に大幅に左右されない(ただし完全にではない)トリガー抵抗を提供する。(頑住吉注: http://www.feinwerkbau.de/ceasy/modules/cms/usage.main.php5?cPageId=15 ここがファインベルクバウのエアピストルに関する公式ページですが、モデル80、90というのはすでになく、現行の製品のうちこのパラレルトリガーを装備したものがあるのかは不明です)


 私は図2.11.6で示されているようにトリガー(だけでなくシア等もそうですが)の軸の位置によって作動に要する力が変化することはモノ作りの中で経験的に知っていましたが、可能な範囲でできるだけa)のように梃子の原理を使って軽い力で動くようにした方が望ましいと思っていました。しかし考えてみれば梃子の原理を使えば動かさねばならない距離が大きくなり、トリガーならばトリガーストロークが大きくなって命中精度に悪影響が出ることもあり得るわけですね。

 雑誌の製品紹介記事を書いていた頃、よくトリガープルを計測しましたが、どのポイントで計測するかはあまり意識せず、大体指で引くのと同じ位置で、という感じで計測していました。しかし回転式のトリガーの場合、L字型の太いワイヤーなどをトリガーにひっかけて引くと、引くにしたがって接点が先端方向にずれてきます。これでは例えばガバメントのようなスライド式トリガーの銃の数値と比較する場合に実際より不利な数値が出ることになってしまうわけで、何らかの方法で接点が先端方向にずれないようにする必要があると思われます。

 「パラレルトリガー」というのは存在自体知りませんでした。非常に興味深い構造ですが、これはどう考えても競技銃だけのもので、実用銃に組み込んだらオーバーエンジニアリングでしょうな。







戻るボタン