2.11.2 レットオフのメカニズム

 我々はこれまでいくつかのトリガーの性質に関して記述し、概念を定義してきた。我々はここで今コック部品と打撃部品の位置関係(頑住吉注:悩んだ末の訳語ですが、微妙にニュアンスが違う気もします。原文では「体位」も表す「Lage」という単語が使われています)、そしてレストの形状に取り組みたい。それらは全て(簡単に変更できるスプリングの力とならんで)トリガー抵抗に大きな影響を持つからである。我々は全ての部品のメカニズムの加工およびフィットが完璧であることを前提とする。例えば軸がそれの位置する穴の中で信頼性を欠く遊びを示さず、表面は目的にかなって適切に加工され、負担を背負う面が片方のみでなく全幅で使われるべきである。

2.11.2.1 レストの位置関係

 図2.11.2はコック部品によってコックされた位置に保持されているハンマーを示している。ハンマー軸A、コック部品の軸Bの中心点、そしてコック部品のレストがハンマーのレスト内をグリップしている位置Cは三角形を形作っている。ハンマースプリングによってハンマーには回転モーメントが作用している。これはコック部品によって受け入れられねばならない。この力は結んだ線ACに対し垂直に作用する。αが直角ならば力のラインは正確にコック部品軸の中心を通り、回転モーメントはコック部品に伝達されない。αが90度より大きいと回転モーメントが時計方向にコック部品に作用し、トリガー抵抗は強まる。この配置は安全技術上のメリットを提供する。αが大きいと回転モーメントによってレストおよび軸の抵抗が克服され、トリガーからの圧力がなくなった時、一部レストから引き抜かれたコック部品がひとりでに再び本来の位置に戻る。実際上全てのモダンなリボルバーおよび多くのセルフローディングピストルではαが90度より大きい。αは決して90度より小さいべきではない。というのはそうした場合、回転モーメントが反時計方向に作用し、トリガーが不確実にされ、ひとりでにレットオフする可能性がある。例えばコック部品スプリングが折れたりコッキングに作用しなくなった場合である。



図2.11.2 コック部品および打撃部品の回転ポイントとの関係におけるレストの位置


 黄緑で表現している「打撃部品」つまりハンマーには反時計方向、黄色で表現している「コック部品」つまりシアには時計方向に回転するようテンションがかけられています。シアは下端でハンマーの段差をひっかけて止めています。スプリングのテンションに逆らってシアを反時計方向にやや回転させるとハンマーがレットオフされます。角度αが直角より大きいとシアの復帰スプリングだけでなくハンマースプリングのテンションによってもシアが時計方向に回転しようとするので、レットオフにはより大きな力が必要になり、またややトリガーを引いてから射撃を中止してトリガーを放した場合もシアは出発位置まで復帰します。シアの復帰スプリングは通常さほど強いものではないので、αが直角だとややトリガーを引いてから射撃を中止してトリガーを放した場合シアが中途半端な位置に留まる可能性があり、次にトリガーを引く際通常より簡単に発射したり、最悪強い衝撃によってレットオフする可能性もあって危険です。ですからほとんどの銃ではαは直角より大きく設定されているということです。







戻るボタン