これはH&KG36C製作の様子をお知らせした記録です。なお、別ページとだぶる画像は削除しました。

7月21日
 いよいよ製作に着手しました。新作の製作作業は約4ヶ月ぶりです。こんなに間が開いたのは10年ほどなかったことです。これも9mm機関けん銃が異常に作りにくかったせい、といいますか。どこの部分を作るにも違和感があったあの銃と違い、やはりH&Kの銃は大筋合理的な感じです。また、最近の銃に多用されるプラスチック製の部品には、手作業では作りにくい複雑なモールド、造形のあるものが多いですが、H&Kの銃はのっぺりしてシンプルなデザインなので作りやすいです。とはいえ、アームズの作例と違い、型で抜ける形でなければならない、最低限の強度がなくてはならない、分解・組みたてや扱いがあまりにコツを要するものであってはいけない、写真に写りにくい部分も手を抜くわけにいかない、といった制約があるのでそれなりに大変です。
 現在いちばんの問題は、幅です。電動ガンは実銃より幅が大きいものが多いです。プラキャストで作る場合は、強度確保のためそれよりさらに太らせたいところです。通常は太らせる場合の制約は外観の違和感だけです。ところがG36の場合はこれに加え、レシーバーをあまり厚くするとSG550のマガジンの連結機能が使えなくなってしまうという問題があります。せっかくある程度リアリティを犠牲にして既存のマガジンを使うのですから連結機能は生かしたいところです。ちなみに実銃の装弾数の違いからマガジンの長さも違いますが、差は10mm以上15mm以下といったところで、あまり大きな違和感はないと思います。
 バッテリーは当然ミニバッテリーをハンドガード内に収納することになると思っていました。これも銃を太らせる原因になります。しかし、意外なことにハンドガード内にウナギ型バッテリーが充分入ることがわかりました。ちなみにメカボックスの上部にはバッテリーを収めるほどのスペースはないものの、7mmくらいの余剰スペースがあるのでここの肉を厚くとり、6mmくらいの長いネジを鋳込もうかと思っています。そうすれば限度はありますが、側面の肉を薄くしてもある程度強度が確保できるのではないかと思います。
 残念ですが、コッキングハンドル、エジェクションポート内のボルトは固定になりそうです。9mm機関けん銃はブローバックなので可動にしたわけですが、電動ガンの場合は強度アップやコストダウンを優先した方が得策でしょう。
 
 青井邦夫さんからまた情報をいただきました。人気ゲームソフトの映画版で、現在アメリカでヒットしている「トゥームレイダー」に、敵の特殊部隊の銃としてG36(Cではない)が大量に登場するそうです。このためG36の国内での認知度も秋以降アップする可能性も。場合によってはバリエーションとしてG36を作る必要も出てくるかもしれません。長いほど強度や製造上の問題が大きくなるので、まずG36Cをやってみて、いけそうなら、ということになるでしょう。

7月26日
 今こんな感じです。

G36C製作過程1

G36C製作過程2

7月29日
 いつものことですが、私はまず機能の部分を先に作り、問題ないことを確認してから細部の造形に入ります。現在すでにほぼ機能はできています。実銃通りピン1本抜くとハンドガードがストレートに前方に抜けます。このピンはMP5Kのスプリングピンを使いたいところですが、長さが不足なので芯を鋳込んだプラキャスト製になるでしょう。ハンドガードを外すとバッテリー交換、ホップ調節ができます。本体の方は強度の関係でピンを抜くことでポンポン分解していくわけにはいかず、最低2箇所でネジによって締めつけることになるでしょう。マガジンキャッチはスペース等の関係でシーソー運動にできず、作動方向が逆になっています。ロックボタンを押すとストックがたため、ケースディフレクターの突起にひっかけて保持することができます。
 大体の形ができたのでずいぶん進展したようですが、作業量としてはまだ1/10以下でしょう。でも10月末ごろ発売という予定はやや手前に修正してもいいかもしれないという気がしてきました。製作期間が短ければその分価格も安くて済むかもしれません。
 実は上の写真を撮ってから修正した部分があります。私は製作にあたって、側面写真を実物大に拡大したものを使います。ところがG36Cの大きく鮮明な側面写真がありません。そこでG36Cの拡大しすぎて不鮮明になったものを補助的に使い、主にH&Kカタログから拡大したG36の側面写真を使っています。これに合わせてストックを作り、なにげなくG36Cの側面と重ねてみたら、ストックが長すぎるんです。写真にはゆがみがつきものですから多少の誤差はありますが、明らかにその範囲を越えています。ストックをたたんだときの先端の位置などで見たところ、G36CのストックはG36およびG36Kのものより1インチばかり短いということが判明しました。分かってから見ればストックを伸ばした側面比較でも違いが認識できますが、ライフルとほぼ同じデザインでありながらちょっとだけ短いなどというストックが存在しうるとは全然思わず、気づきませんでした。そんなわけでバリエーションとしてのG36およびG36Kはますます難しくなりました。 

8月4日
 今こんな感じです。

製作過程3

 もう作業量で一割は越えたでしょう。マガジンハウジング側面はマガジンの連結機能が生かせるぎりぎりの厚さになっています。実銃ではこの部分は他のレシーバー側面と同じ厚さなんですが、ここに合わせると他の部分の強度が不安なので、他の部分は1mmずつ厚くしてあります。もうばれているかもしれませんが、大胆不敵にも、グリップフレームは少々の加工をした上で流用するつもりです。プラキャスト製ではモーターの保持など精度、強度が不足すると思われるので。フォアグリップ両側面、下面にはマウントレールが装着できるようにする予定です。プラキャストのメネジでは弱いので、内部にナットを入れる形にしたいです。レールはライラックスブランドのものを使いたかったんですが、長さ、ネジ穴の位置などがどれも合わず、断念しました。レールは3mmネジをネジ穴の左右に一本づつ、計2本鋳込んだプラキャスト製になると思います。
 G36Cは国内ではまだ紹介されていない、と書いたところ、コンバットマガジンに載っていたはず、というご指摘をいただきました。調べたところ、今年3月号に写真が1枚だけ(それも逆光でシルエット状です)載っているのを見つけました。現在までのところ、国内での紹介はこれだけのようです。

8月13日

G36C製作過程4

G36C製作過程5

 何と言いましょうやら。9mm機関けん銃のとき見とおしが甘く、予定を大幅にオーバーしたことから慎重にしていましたが、どう考えてももうすぐ完成です。造形で残っている部分はもうほとんどなく、後はエッジを丸める、ラインを直線、それぞれのラインを平行に整えるなどの作業だけ、それが終わったらサーフェイサーを吹いて仕上げにかかります。まあここからがいちばん地味で進行が遅く、しんどい作業なわけですが、9mm機関けん銃と違って無茶苦茶にやりにくそうな部分もありません。
 この分だと、来月初めには試作1号機が完成、下旬には発売可能になるかもしれません。
 着手からまだ1ヶ月も経っておらず、9mm機関けん銃のときの製作記をふりかえってみたら、半分の時間しかかかっていません。いまさらながら、あれは異常な銃だったと思います。ただ、やはりサイズの問題から、シリコンゴム、キャストの使用量は9mm機関けん銃の倍では収まらないかもしれません。全体の強度、剛性、特にサイドスイング式折りたたみストックの使用感がどうなるかはやってみないと何ともいえません。

8月19日
 仕上げに入りました。全体をできるだけきれいに整えた後、サーフェイサー(溶きパテ)を吹き、そこにパテを盛り、ヤスリやペーパーがけをして仕上げていきます。パテはポリパテ、ポリパテをシンナーで溶いた溶きポリパテ、ラッカー系パテの順に使い、段々に完成に近づいていきます。サーフェイサーはパテを盛って整形するたびに吹かなければなりません。ところがこの銃は大きいため、全パーツの全体に吹くと1本半も使ってしまいます。やはり9mm機関けん銃の倍くらいです。シリコンゴム、プラキャストもたぶんこの調子で2倍程度かかっていくでしょう。今までで最大の型はPDWのロアレシーバーでした。9mm機関けん銃で最大のパーツ、アッパーレシーバーより、PDWのロアレシーバーの方がグリップが一体の分大きな型になったんです。これでも持ち上げるのに赤ちゃんを抱き上げるくらいの力が要りました。今回最大のパーツはアッパーレシーバーです。実銃ではハンドガード前部の基部より少し先までで終わっていますが、キットでは剛性を確保するため先端近くまで伸びており、その長さは45cmくらいあります。どう見積もってもPDWのロアレシーバーの型の倍の重さにはなるでしょう。注入のため持ち上げるだけでも一苦労、硬化が進行しないうちにあちこち傾けてトントン叩き、気泡を追い出す作業もしなくてはならず、相当大変そうです。
 ただ、パーツ数は9mm機関けん銃よりだいぶ少なくなりそうです。マガジンキャッチは歯科用レジンでは後加工が大変になる形状なのでホワイトメタルにする予定です。今回は歯科用レジンは使わないかもしれません。組みたても9mm機関けん銃より容易になるでしょう。意外にパーツ数が少なくなりそうなので、1つだけギミックを追加しようと思いました。コッキングハンドルを可動にしようかとも思ったんですが、左右どちらにも曲げてコックでき、手を離すと自動復帰するギミックは複雑で壊れやすいものになります。また銃を太らせないかぎりボルトは動かせません。ボルトは動かずコッキングハンドルだけ動いてもあまり意味がないと思われます。そこでリアサイトを可動とし、Vノッチとピープを選択できるようにしました。もちろんパチパチとクリックストップします。
 ぴったり入り、強度も充分な箱が見当たらないので、久しぶりに段ボールを業者に特注することになりそうです。

8月26日
 
サーフェイサーを10本近く使って(正確には数えてませんが)まだ表面処理が終わりません(笑)。1挺の銃を作るのにこんなに使ったことはありません。9mm機関けん銃でも5本は使わなかったと記憶しています。アームズの作例ではこれほどていねいにやらず、適当なところでスエード調スプレーを吹いてごまかしてしまうことが多かったですねえ。今回はそういうごまかしができませんから大変です。ただ、分解しないと見えない部分は手を抜かせていただきます。「大体終わりかな」と思ってサーフェイサーがけのため明るい日光の下に出たら「げ、なんじゃこりゃ」てなこともありまして、製作開始以来初めて作業が難航しています。それでも9月上旬のうちには1号機が完成するでしょう。ちょうどホームページ1周年記念作品みたいな感じでしょうか。
 ちょっと心配なこととして、レールの問題があります。ハンドガード両側面、下面に装着する3本のレールを標準装備する予定ですが、原型を3つ作る手間は無駄ですから、原型は1個作り、それを複製して3個にし、これを使って1度に3個できる型を作ることになります。これだと製品は原型から2回の複製過程を経ることになり、誤差(主に収縮)が大きくなりやすくなります。スコープマウントリングのように左右からネジでしめつけるタイプは少しくらい誤差があっても大丈夫ですが、中にはレールの前後から差し込んで上下方向に締めつけるタイプのアクセサリーがあり、このタイプはほとんど誤差が許されません。製品版でちゃんとつくかどうかはやってみないとわからないです。まあレールは小さいので多少の修正を加えて型を作り直すことも比較的簡単でしょう。キャリングハンドルのレールで誤差が生じたらちょっと困りますね。
 アウターバレル(といってもこの銃の場合全然露出はしませんが)は11mmアルミパイプにして、プラキャスト製のフラッシュハイダー(肉厚やデザインから強度の問題はあまりなさそうです)をイモネジで固定する予定です。どうして11mmなどという半端なパイプを使うかというと、フラッシュハイダーを外してKM企画さんのMP5A4&5用マズルアダプターと交換し、サイレンサー、ハイダー類を装着可能にするためです。

9月1日
 小さなパーツ、単純な形状のパーツから型取りを始めました。いちばん難しいのはアッパーレシーバー、続いてストック、ハンドガード、キャリングハンドルといったところですが、これらもそろそろ終わりです。試作1号機完成まであと1週間くらいでしょうか。
 なるべく安く販売するため、完成品にもバッテリーはもちろん、マガジンも付属しない予定です。すでに持っている方もいるでしょうし、多弾数、ノーマルという好みの違いもありますし。それに東京マルイ製電動ガンのマガジンは全国どこでも入手が簡単でしょう。内部メカもノーマルのままにします。ある程度性能を求める方には最低限XM177E2等と同じ穴の位置のシリンダーと長いインナーバレルを別に入手して組みこんでもらうことになります。このためにも分解、組みたては簡単でなくてはならないという制約ができます。
 マガジンといえば、G36Cは30連、SG550は20連です。これでどうして外観の違和感が少なくてすむのか疑問に思っている方もいらっしゃるようです。その理由は、前者は半分くらいが銃の中に隠れる形、後者は大部分が露出する形、という違いがあり、露出部分の長さはあまり変わらないということです。ただ、これによってマガジン上部とチャンバーが離れています。両者をバイパスで結んでいるため、マガジン交換のたびに10発(普通2〜3発ですよね)くらいのBB弾がこぼれ落ちることになってしまいました。
 完成品の場合塗料代もかなり高くなります。9mm機関けん銃ですら「ファインスプレー ブラッセン」1本で4挺くらいしか塗れませんでした。この倍ですむか疑問ですし、それでも1挺につき1,000円以上かかることになります。やはり長物は大変ですね。

9月6日
 型が完成しました。アッパーレシーバーの型の重さを体重計(笑)で計ると約6kgありました。大変です。これから注型のテストに入ります。さて、試作第一号は1周年記念日に間に合うでしょうか。

9月9日
 おかげさまで試作第一号機が何とか完成しました。というわけで恒例の、


 9mm機関けん銃の時のように、「ついに、やっと」という感じではなく、何かちょっとあっけない感じです。モデルアップにあたってあまり困難らしい困難はなかったです。ただ、着手直後から「これはネックになりそう」という予感があった1点がちょっと課題として残っています。それはマガジンです。
 SG550シリーズのマガジンは、M16シリーズなどのようなストレートに挿入する形ではなく、まず前をひっかけて回すように後方を入れる形です。そして、マガジン前部のひっかける段差はわずか2mmしかありません。プラキャストの精度、剛性ではマガジンをしっかり保持できないんです。やむを得ず、ここに1mmABS板を接着して固定することができるようになりましたが、既成のマガジンをそのまま使うことは難しいようです。ごく簡単とはいえ加工を必要とする以上、完成品にはマガジンを付属する必要が生じると思います。なお、私はSG550シリーズを持っていないので、この加工をしたマガジンが逆にSG550シリーズに使えるかは確認できていません。
 また、マガジン上部とチャンバー下部(この銃の場合はバイパス下部ということになりますが)のコンタクトは元々ストレートであるべきで、回転運動の場合やや無理が生じます。メーカー量産品の場合は問題ないですが、やはりプラキャストの精度、剛性ではリップがきちんと解除されない、これを解消しようとすると着脱がしぶくなる、といったウイークポイントになりやすいようです。
 このようにやや課題を残してはいますが、ほぼ目途は立ちました。9月末には発売できるはずです。価格はキット22,000円、完成品5,5000円くらいになるでしょうか。注型や組みたてを少なくとも数挺こなしてみないと最終的に決定できませんが。


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