1.12.4 いくつかの特別な形

 ある生産物の技術的開発の経過の中には、いろいろな局面が存在する。最初のうちは大きく異なった型の形が出現するが、その後における生き残りは、実用価値とマーケットの状況に依存する。より古い製品に比べていくつかの原理上の長所を持つ似た製品のマーケットへの出現はしばしば、「改良」によって古い製品にできるだけ多くの新しい製品の性質を与えるという形で企てられる。この際そうした製品は欠点とされるものが事実ある、あるいは重要であるとされ、よい評判を得られないことが時々ある。そうした品はほとんど常に、単なる欠点への疑念がすでに不利であり得る、わずかな情報しか与えられていないマーケットで販売されなければならないからである。こうした道はリボルバーの発達の際にも起こり得る。我々はここで、設計者がこれによってそのような欠点を避けようと望んだ、2つの構造を取り上げたい(頑住吉注:いまいち分かりにくいですが、要するに「他の製品同様リボルバーの発達過程にも、従来の製品を改良して新しい長所を与えようとしたタイプが存在した。こうしたタイプは実用価値があってもいろいろな事情で失敗に終わることもあり、普及しなかったからといって必ずしもダメだったとは限らない。ここではそうしたタイプを2つ取り上げる。」といった意味でしょう。ちなみにその2つのタイプとは、1つがこれから取り上げるガスシールリボルバーであり、もう1つは次回登場するオートマチックリボルバーです)。

1.12.4.1 ガス気密リボルバー
 明らかにこの省エネを意識した構造は、多くの銃器設計者が長年来非常によく開発してきたものである。というのは、我々はすでにシリンダーとバレルの間の隙間における損失を小さくするための初期の試みに出会っている。ずっと以前に述べたように、E.H.Collierはすでに1818年、シリンダーの回転後に前が漏斗型に広げられたチャンバーの開口がテーパーのかかったバレル基部に押しかぶされるというリボルバー銃の英国パテントを得ている。1845〜1860年にはイギリスにおいてLangによるもの、およびいくつかの模倣リボルバーが作られた。こうした銃ではハンマーがその前進運動の際にくさびを押し動かし、これがシリンダーを前に圧し、それによってCollierの場合のようにシリンダーとバレルの間の気密を行った。この原理はすぐ次の時代において一連のパーカッションリボルバーの構造で使われた。我々はここでさらにGlageに言及したい。これは気密を達成するためにシリンダーではなくバレルを押し動かした(頑住吉注:初期のマルシン製ガスリボルバーのような感じでしょうか。ちなみにアメリカで1850年代に開発され、南北戦争の頃軍用としても使われたサベージネービーもガスシールリボルバーで、これに関しては当該の項目に詳しい記述があります)。

 カートリッジ弾薬の一般的普及によって、発明者は気密の方法を変化させた。薬莢による気密を、チャンバーと薬莢底部の接する面との間だけでなく、シリンダーとバレルの間にも使うことによってである。D.B.Wesson(頑住吉注:S&W創設者の1人)はこれを、バレルの後ろに位置するチャンバー内の弾薬を大きく前方に押し動かし、薬莢をバレル内に突き出すことによって達成した(1878年)。

 シリンダーの隙間を気密する、唯一商業的にも成功したシステムは、H.Pieperに起源が求められる。彼は1890年にリエージュ(頑住吉注:ベルギーの都市)においてガス気密リボルバーの生産を始めた。彼の発明の基礎は、弾丸が完全に薬莢内に位置する薬莢だった。この薬莢の前端は何mmかチャンバーから突き出ていた。銃のコック時、シリンダーはまず回転し、そしてその後銃内部のレバーによって前方に押し動かされた。これによって薬莢前端はバレル内に位置し、シリンダーの隙間の気密を引き受けた。口径8mmの1機種のPieperリボルバーは1890年以後メキシコ陸軍に導入された。

 1895年、Nagant社(リエージュ所在)は同様にガス気密リボルバーを世に出した。この銃は主に、シリンダーが前方に、そしてそれによって薬莢前端がバレル内に押し動かされるメカニズムによってPieperリボルバーと異なっていた。図1-49はこの銃の一部断面図を示している(頑住吉注: http://world.guns.ru/handguns/hg102-e.htm )。この銃ではシリンダーは7つのチャンバーを持ち、フレーム内に固定された回転軸に設置されている。この銃はフレーム右サイドに取り付けられた装填跳ね蓋を下へと方向転換した後で装填が行われる。薬莢は1本のエジェクターによって1つずつシリンダーから押し出される。エジェクターはバレルにヒンジ結合され、使用しない時はシリンダー軸内の空洞に位置する。メインスプリングの上の脚はハンマーに必要なテンションを与え、そして同時にリバウンドレバーとしても作用している。下の脚は既知の方法でシリンダーハンドとトリガーに作用している。

 図1-50はシリンダーがバレル方向に押し動かされるメカニズムを示している。シリンダーは軸パイプ(4)上に回転可能に設置されている。この軸パイプ自体はシリンダー軸(3)にかぶせられている。コイルスプリングが軸パイプを介してフレーム(1)上で自らを支えており、シリンダーを後方に押している。トリガー(5)への圧力、あるいはハンマーのコッキングし始めによって、まずシリンダーは360/7度回転する。コッキング運動の継続に際して「薬莢底部に接する面かんぬき」(6)がいっぱいに上に押し動かされるので、フレーム内に関節結合された「薬莢底部に接する面」(7)は前方に動かされる。その際圧力は弾薬のリムを通じてシリンダーに伝達され、弾薬とシリンダーは前方に押し動かされる。終わりの位置(ここでは薬莢の口はバレル内に位置している)は図1-51で表現されている。トリガー本体は阻止ノーズを持っている。我々がアダムスリボルバーによって知っているようにである。トリガーはその回転軸の前にさらに1つのフックを持っており、これはシリンダーを段差部でいくらか後方へ引くことができる。いつか起こるはずの、薬莢の口がバレル内に余りに強く張り付いて動かなくなり、コイルスプリングの圧力では薬莢を緩めるのに充分でない時にである。

(頑住吉注:実際の本では1-49で全体の断面、1-50a)でトリガーを引く前のシリンダーまわりの断面、1-50b)でトリガーを引いた際のシリンダーまわりの断面と、3つのイラストで説明されていますが、ここでは1-50a)の核心部分のみ示します。7は原文ではオートピストル、ライフル、ボルトアクションライフルなどで包底面にあたる「Stossboden」=「突く底」という語で表現されていますが、リボルバーの場合包底面ではおかしいので「薬莢底部に接する面」と回りくどい語に訳しています。6はこの「薬莢底部に接する面」を動かす「薬莢底部に接する面かんぬき」で、フレームのスリット内に位置していて垂直に上下にのみ動くことができます。5のトリガーを引くとこの「薬莢底部に接する面かんぬき」は押し上げられ、これに押されて「薬莢底部に接する面」が前進して薬莢の底部を押し、これに押されて2のシリンダーも前進してガスシールされるわけです。トリガーに固定されたシリンダーストップの突起の前にはフック状部分があり、シリンダーが前進したまま復帰しないとき強制的に引き戻すことができるようになっています)

 このナガンリボルバーは1895年にロシア陸軍に受け入れられ、1899年以後はTulaにおいて製造された。1928年にSociete en Commandite Nagant Freres社が解散した時、ポーランドがこのリボルバーのための生産設備を買い取った。後の1930年、このロシア人が使ったのと同じモデルのガス気密ナガンリボルバーの製造は、Radomにおいて開始された。この興味深いリボルバーがロシアにおいて長く製造され、第二次大戦中でもまだ部隊に支給された一方で、ポーランド人は1935年にはすでにモダンな口径9mmパラベラムのセルフローディングピストルによってこの銃を交換した。

 Pieper風ガス気密機能を持つリボルバーはどう語られるだろうか? こうした設備によって達成され得る、より高い弾丸速度は確かなものではない。というのは、これは発射薬の増量によって決定的により簡単に、そしてより安価にもたらされ得るからである。より大きな発射薬のコストは、薬莢の真鍮の倹約によっていくらか相殺される。それだけではなくこの(頑住吉注:ガスシール機能のない)銃はよりシンプルで原理上より信頼性が高い。口径.44レミントンマグナムのリボルバーが我々に示すように、人はガス気密なしでも射手が耐えられるリコイルの上限の弾丸速度に到達したのである(頑住吉注:この本が書かれた1980年代前半には.44マグナムがハンドガンの上限と考えられていたようです。まあ結果的に.500マグナムにも、当時はなかった特殊な.17HMRにもガスシールシステムなど不要だったわけです)。

 薬莢の口によるチャンバーとバレルの正確なセンター出しは1つの長所を提供する。適切に製造されたこの種のリボルバーの命中精度は確かにノーマルなリボルバーより高いし、セルフローディングピストル程度に達するだろう。

 1966年のWiesbadenにおける射撃の世界選手権に際して、ロシアの選手は大口径射撃用にガス気密リボルバーモデルTOZ-36を使用した。このJ.Chaidurowによって設計された銃は、ナガンの前方に押し動かす設備を持っていた。しかし他の点では発火機構の構造上モデル1895とは異なっていた。この構造に至るきっかけは明らかに、より良いシリンダーとバレルの整列によるより高い命中精度だった。


 リボルバーの基本的な発達史を一応終わり、これからしばらく特殊な型や個別の特徴に触れた後、オートピストルの発達史に移っていくことになります。


 さすがにナガンリボルバーに関してはネット上に豊富な情報があります。

http://www.geocities.com/Pentagon/Bunker/4064/PersCollection/M1895page.html#Start

http://www.geocities.com/Pentagon/Bunker/4064/PersCollection/KnowyourM1895.html

 ガスシール自体の是非に関してはあまり深く考えたことがありませんでしたが、ほとんどの銃がなしで済ませている以上基本的には不要ということでいいんでしょう。ここには書かれていませんが、このシステムにはトリガーに余計な役割を与えているためトリガープルが重くなるというデメリットもありますし、これはデザイン次第かもしれませんが少なくともナガンの場合にはファイアリングピンが異常に長くなって破損しやすそうに見えます。ただ、このシステムにはバレルとシリンダー内チャンバーの正確な軸線の一致を助け、命中精度を向上するメリットもあるというのには気付きませんでした。ただしこれは競技銃でない限りほとんどメリットにはならないでしょう。これもここでは触れられていませんでしたが、ガスシールシステムには通常リボルバーでは無効であるサイレンサーの効果を著しく高めるというメリットもあります。

http://guns.connect.fi/gow/nagant.html

 これは珍しいサイレンサーモデルの画像があるページです。


 私はこの銃の味のあるスタイルが好きで、困難ではありますができれば作ってみたいです。








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