2.11.5.2 ハンマートラップ式ダブルアクション銃

 図2.11.18はF.ワルサーによって彼の有名なモデルPP(1929年)、PPK(1931年)、Heeres-Pistole(頑住吉注:「陸軍ピストル」。P38の原型)において使用されたシステムを示している。トリガー(1)はトリガーバー(2)を介してコック部品(3)と「連れて行くレスト」を使って結合状態にある。ハンマー(5)にはスプリングのテンションがかけられた「連れて行くもの」(ハンマートラップ)(4)が装備され、ハンマーの足部にはコックレスト(7)がある。コック部品には適合するコックレスト(6)が加工されている。a)はデコック状態の発火機構を示している。ダブルアクション銃としての銃の使用の際はトリガーはdの方向に動かされる。これによりトリガーバーはeの方向にスライドする(b)。これによりコック部品はfが示すように回転し、この結果ハンマーは「連れて行くもの」を使って回転によってg方向へコックされる。コック運動の最後に「連れて行くもの」はコック部品から滑って逸れ、ハンマーは落ちる。閉鎖機構の後退時トリガーバーはいくらか下に押され、コック部品のレストと干渉外となり、ハンマーはコック部品のコックレストによってコックされた位置に保持される(8)(c)。コックレストの配置と「連れて行くもの」の位置決めは、トリガーを引く際「連れて行くもの」はコック部品に触れず(9)、そしてハンマーが自由に前方に急速に動けるという結果をもたらす。







図2.11.18 ワルサーセルフローディングピストルのSAおよびDA設備。a)ハンマーはデコック状態、b)ハンマーはトリガーによってコッキングされ、レットオフ寸前、c)ハンマーはノーマルにコックされている状態

 図2.11.19は陸軍ピストルのハンマーの構造を示している。ハンマー本体(1)内には「連れて行くもの」(2)が軸上で回転可能に収納されている。1本のピンがコイルスプリングによって前方に押されている「連れて行くもの」のストッパーとして役立つ。ハンマースプリングのバーはスプリングの力をピン(3)を介してハンマーに伝達する。我々はワルサーのダブルアクション構造の原理をすでに1853年にMangeot-Comblainのリボルバー発火機構に見いだしている。



図2.11.19 DA/SAピストルであるP38のハンマー


 ワルサーのダブルアクションオートピストルはブローニングと並ぶとはいかないまでもグロック並みに非常に多くのピストルに影響を与えました。しかしこのダブルアクショントリガーメカニズム自体を真似たものはあまり多くありません。このためこのリボルバーのそれに似たダブルアクションシステムはオートピストル中やや異色の存在になっています。この理由は、このシステムが、普及しているいわゆる「引き起こし式」(次回登場します)などに比べ、より高いパーツの精度を要求するものだからでしょう。例えば精度、剛性の低いガレージキットでこのシステムを再現するのはちょっと無理そうです。東京マルイの「作るモデルガン」くらいのパーツ強度があれば充分作動するわけですから実銃なら問題ないようにも思われますが、パーツの磨耗などによって問題が生じやすくなるはずですし、他にデメリットがなければ技術的なハードルは低い方がいいに決まっています。

http://www.mek-schuetzen.de/Blueprints/walther__p38.gif

http://www.mek-schuetzen.de/Blueprints/walther_pp_pic.JPG

 ワルサーもP88では通常の引き起こし式に変えています。

http://www.mek-schuetzen.de/Blueprints/walther_p88.JPG







戻るボタン