1.12.3 ハンマーに関節結合されたダブルアクションシアを持つダブルアクション銃の発達

 1851年、ロンドンのKristallpalastにおける大博覧会において、Lefaucheuxはあるペッパーボックスを提示した。この銃はS.Houllierによって改良されたピンファイア弾薬用に作られていた。だが、すでにペッパーボックスに残された時間は限られており、このためLefaucheuxはあるリボルバーをマーケットに持ち込んだ。この銃はアダムス風のダブルアクション発火機構を装備し、ピンファイア弾薬用に作られていた。このLefaucheuxリボルバーは、最初の「後装」リボルバーである。これに素早く装填できるという可能性は、この銃を大きな成功に導いた。そしてわずかの時間の後にはすでに、多くの銃器メーカーによって「Lefaucheux」リボルバー(頑住吉注:要するにLefaucheux亜流のピンファイアリボルバー)が製造されていた。その名はすぐに、もはやメーカーではなく、この銃用に作られた弾薬を指し示すようになった。特にベルギーにおいては大量のピンファイアリボルバーが非常にさまざまなクオリティで作られた。その生産は1939年になって初めて終わった。特に多かったのは口径7mmと9mmの銃である。より大きな12mmはそれより稀で、15mmは稀だった。1858年、Lefaucheuxリボルバーは、フランスおよびイタリア海軍用に購入された。1863年にはスウェーデンおよびスペイン砲兵隊用に、そして1864年にはノルウェー砲兵隊および騎兵用に購入された。

 Lefaucheuxは彼の最初のリボルバーにアダムス式発火機構を装備したが、ピンファイア弾薬用に作られたたいていのリボルバーは、ベルギーのライフル工MangeotおよびComblainに起源を持つダブルアクションメカニズム(1853年)を装備した。。図1-45はMangeot-Comblain式ダブルアクション装置の原理を示している。トリガーはくちばし部で終わっており、このくちばし部はハンマー下部にスプリングのテンションをかけて関節結合されたダブルアクションシアをつかんでいる。トリガーへの圧力により、ハンマーはくちばし部がダブルアクションシアを解放し、ハンマーが前方に急速に動けるようになるまで持ち上げられる。1854年頃、ベルギー人のFagardがハンマーにコッキングノッチ(2)を付け加え、これにより発火機構がシングルアクションでもあるようにした。シリンダーハンドは通常のようにトリガーに関節結合されていた。これは図では省略されている。

図1-45 典型的ピンファイア弾薬リボルバー発火機構の単純化された表現。(1)=ダブルアクションシア (2)=ハンマーのコッキングノッチ シリンダーハンドは省略されている。

 安価なLefaucheuxリボルバーに使われたが、非常に良好に作られたアダムス、Chamelot & Delvigne(頑住吉注:前回登場したフランス製軍用リボルバー)、ウェブリー、ナガンリボルバーにも使われたアダムス式シリンダー拘束(トリガーにシリンダーストップが付属する形式)は、2つの欠点を持っている。1つはシリンダーが銃がコックされた時しか拘束されないことである。つまり携帯の際シリンダーは大きな抵抗なしに回転させられる可能性がある。これは全てのチャンバーに装填されておらず、銃を素早く使用しなくてはならない時に厄介である。2つめは、シリンダーカム(4)(図1-46を見よ)が、発射前にシリンダーハンドの働きでトリガー(2)上に存在するシリンダーストップに圧迫されなければならないことである。さもないとシリンダーとバレルが「fluchten」しないからである。このため非常に正確なハンマーの運動のシリンダーハンドとの同調が必要となった。このことはダブル、シングルアクションを装備したリボルバーの場合、不可能ではないにしても非常に困難だった。望ましくないシリンダーの調整がいくらか起こりにくくするため、しばしばシリンダー軸(5)とシリンダーの間にスプリングがブレーキとして追加された。これは確実さに欠けるダブルアクション射撃を簡単にするための間に合わせである。

図1-46 あるLefaucheuxリボルバーの場合のアダムス式シリンダー拘束。(1)=フレーム (2)=シリンダーストップを伴うトリガー (3)、(4)=シリンダーカム (5)=「動きを悪くする」スプリングを伴うシリンダー軸 (6)=歯車 図示されていないシリンダーハンドはシリンダーを矢印方向に回転させる(a)。(頑住吉注:黄色で示した部分はこういうことだと思います。「現代リボルバーのシリンダーストップはスプリングのテンションがかけられた独立したパーツなので、早めに解放されて上昇しようとし、シリンダーが定位置に回ってきたところでパチンと上昇して凹とかみ合い、シリンダーを1点で止めることができる。しかしアダムス方式の場合、トリガーに固定されたシリンダーストップはシリンダーの過回転を止めることができるだけで逆回転を止めることはできない。したがって発射時にはシリンダーストップによって過回転が止められ、かつシリンダーハンドによって回転方向に押されてシリンダーがしっかり保持されていなければならない。これにはより厳密な同調が必要であり、特にシリンダーストップが設置されたトリガーの動きが異なるダブル、シングルアクション双方を装備した銃の場合より難易度が高かった。」 「fluchten」という単語は、辞書には「逃げる」という意味しか載っていませんが、明らかにこの場合合いません。文脈上シリンダーとバレルが固定して配列される、という意味だと思われます。ちなみにこの図ではシリンダーストップがシリンダー上の凹ではなく凸に当たって止まるようになっていますが、これは当時いくつかの機種に見られた形式で、原理的には通常の凹を使うものと全く同じです。廃れたのは凹を削る方が製造しやすく、かつ携帯時に邪魔になりにくいからでしょう。なお、シリンダー軸のスプリングがこの調整をいくらか容易にするためというのは違うか、少なくとも別の理由もあるという気がします。シリンダーハンドには前進するテンションがかかっており、発射後、シリンダーハンドのツメが上昇した状態からトリガーを戻してシリンダーハンドが下降するとき、ツメはシリンダーのラチェットをひっかけ、逆回転させようとします。現代のほとんどのリボルバーなどシリンダーストップが独立し、トリガーを戻す際にシリンダーが固定されている銃では何の問題もないんですが、トリガーにシリンダーストップが付属した銃の場合、シリンダーストップはこの際の逆回転を止めることができません。「動きを悪くするスプリング」はこのとき逆回転が起こらないためのものだと思うんですが。こんなことを思うのは私がモデルアップの際この逆回転の防止にいつも苦労させられるからです。ちなみに現代リボルバーの「トリガーを引くときにはシリンダーを解放するのに、戻すときには固定したままでいる」シリンダーストップの巧妙な機能は、精度、剛性の低いガレージキットではきわめて再現困難であり、いまだに再現できていません。もうひとつついででですが、昔のリボルバーの写真を見る際、

シリンダーのノッチが左のようであれば独立したシリンダーストップが存在し、右のようであればトリガーに付属していると見当をつけることができます。)

 ここ(頑住吉注:図1-45)で示された発火メカニズムと違って、MangeotとComblainはトリガーを再びその出発位置に持ってくるための特別なスプリングは使わず、2本脚のメインスプリングのうち下の脚によってテンションをかけられるスプリングレバーを採用した。このレバーはフレームの前サイドに収納され、トリガー上に関節結合されたシリンダーハンドのノッチを圧迫していた。ノッチの方向とスプリングレバーの形状は、シリンダーハンドがシリンダーの歯車に押しつけられる結果をもたらした。壊れないようにしたスプリングの製造が困難だった時代には、2本のスプリング(トリガー用とシリンダーハンド用各1)の倹約は追求の価値あるものだったように思える。このためスプリングレバーの採用は進歩である。

 Mangeot-Comblainによる発火機構は、すぐ次の時代フランスのGaland(1873年)によってTranterコックパーツ(頑住吉注:ハンマー後下方の独立したシア。前回の内容参照)つきで使われ、そしてスイスのSchmidt大佐によってFagardコッキングノッチつきでスイス陸軍リボルバーモデル82用に使われた。Schmidtはシリンダー拘束用としてアダムスによって導入されたトリガー本体上の阻止ノーズを使った。

 1908年以来、コルトも同じ起源を持つ発火機構を使用している。しかしコルトの型では、シリンダーの拘束は特別なシリンダーストップによって引き受けられている。その上この発火機構は安全装置を装備している。これはトリガーがその前のポジションにある時、ハンマーがプライマーに達する可能性を妨げている。この発火機構は今日(1982年)なおいくつかのモデルに組み込まれている(例えばパイソンやダイヤモンドバック)。1969年以来モダンな発火機構がいくつかの銃に使われているのが見られるにしてもである(トルーパーマークV)。

 図1-47は古い発火機構を持つコルト オフィシャルポリスリボルバーを部分断面図で示している(頑住吉注:こちらも参照してください http://www.coltparts.com/pt_officialpolice.html )。シリンダーハンドは普通の方法でトリガ(1)に関節結合されている。ハンマー(2に)はスプリングのテンションがかけられたダブルアクションシア(10)が装備されている。図ではトリガーがいくらか後方に引かれている。この結果ハンマーはやや持ち上げられている。メインスプリング(5)はハンマーを経てリンクに、そしてリバウンドレバー(4)を経てシリンダーハンドとトリガーに作用している。シリンダーハンドはその背面にノッチを備え、リバウンドレバーはここをグリップしている。ノッチとリバウンドレバー先端の形状は、シリンダーハンドがシリンダーの歯車に向けて押されるという結果をもたらしている。シリンダーはクレーンによって方向転換可能な形で銃のフレームに収納されている。このクレーンはシリンダー軸もクレーン軸(9)も担うブリッジからなっている。シリンダーはシリンダー軸上に回転可能な形で取り付けられている。シリンダー軸とクレーン軸は互いに、そしてバレルとも並行に走っている。シリンダーはかんぬき(3)によって回転可能な形でフレームに保持されている。ロードおよびアンロードのためにはこのかんぬきが後方に引かれ、シリンダーは左に方向転換されて出る。リバウンドレバー(4)はさらに2つの機能を持つ。射手がハンマーダウン時にトリガーをいくらか前進させると、レバー(4)はわずかに下に動き、広げられた位置(図の中で4のための矢印が走っているあたり)によってハンマーを前方に押す。これによりハンマー上部はいくらか後方に動かされる。これ以後ハンマーはトリガーの全前進運動の間この位置で動かずにいる。トリガーの動きにより、セーフティレバー(7)によってセーフティかんぬき(8 フレーム内のノッチ内を走っている)がハンマーとフレームの間に押し込まれるので、ハンマーはいかなる場合も次の弾薬に触れることができない。ハンマースパーへの打撃によってもである。

 トリガーの後退運動の始めに際し、レバー(4)はいくらか持ち上げられる。この際その右の角は下からシリンダーストップ(6)の後端を押す。こうして引き起こされたシリンダーストップのわずかな回転運動がシリンダーを解放する。(6)と(4)のレバーの長さはシリンダーの回転運動の終わる直前にシリンダーストップがリバウンドレバーから滑ってそれ、さらなるシリンダー回転時には再びシリンダーの阻止ノッチ内に入るよう計算して決められている。
 
図1-47 コルトリボルバー オフィシャルポリス、パイソン、オフィサーズモデルマッチなどの発火機構。(1)=トリガー (2)=ハンマー (3)=かんぬき (4)=スプリングレバー(リバウンドスプリングレバー) (5)=メインスプリング (6)=シリンダーストップ (7)=セーフティレバー (8)=セーフティかんぬき (9)=クレーン軸 (10)=ダブルアクションシア

 ウェブリーアーミーリボルバーの発火機構の構造は同様にMangeot-Comblain-Fagard-Schmidtに基づいている。1887年、イギリス政府は最初のマークT .455ガバメントモデルリボルバーを注文した。この銃は6発の.455口径弾薬を収容した。変更や改良がしばしば行われたので、このリボルバータイプが1932年に.38口径仕様の後継モデルを見いだすまでに、第6のモデル(マークY)まで成功した。Schmidt同様、この銃のシリンダーの拘束も運動の最後においてトリガー上の阻止ノーズによって引き起こされた。その上トリガー本体はその回転ポイントの前方に第2の阻止ノーズを担っていた。これはトリガーがレスト位置にある時にシリンダーを拘束するものだった。シリンダー外周にあるこのための小さなノッチは、マークV .455ガバメントを示した図1-48ですぐ分かる(頑住吉注: http://world.guns.ru/handguns/hg91-e.htm )。装填のためにはバレルはシリンダーごと前方に位置するヒンジを中心に下方に傾けられる。その際星形のエキストラクターが同時に全ての薬莢(あるいは弾薬)をチャンバーから持ち上げる。前に論評したコルトの発火機構の場合のように、ウェブリーリボルバーの場合も、発射後にトリガーを放した際ハンマーはファイアリングピンがもはや弾薬に触れなくなるまで後退する。だが、ハンマーへの打撃による点火の阻止は、リバウンドレバーのみによって引き受けられている。


 図1-45を見てください。これはもう全てのスプリングが板バネであることとリバウンド、ハンマーブロック、トランスファーバーなどの安全機構がまだない点を除けば現代のダブルアクションリボルバーとほとんど変わりません。これよりかなり後になってもアメリカではトリガー側にダブルアクションシアを装備したリボルバーが主流でした。また、前回も触れたように貫通したリボルバーのチャンバーに金属カートリッジを入れる形式もこうしたピンファイアリボルバーが史上初です。あまり語られないことですが現代リボルバーのメカニズムが、普通に考えられるよりもヨーロッパ製ピンファイアリボルバーの影響下にあることが分かります。










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