H&K HK4製作

これはHK4の製作情況をリアルタイムで記録したものです。なお、他ページと重複する画像は削除しました。

 HK4はH&K初のハンドガンです。ワルサーPPK/Sの対抗機種であり、当時としては非常に軽量であるほか、バレル、リコイルスプリング、マガジンを交換するだけで.22LR、.25ACP、.32ACP、.380ACPという4種類の弾薬を使い分けることができるという大きな特長を持っていました。1984年までに26,550挺が一般市販され、P11ピストルの名称で西ドイツ軍に使用された他、警察などでも使用されました。
 製品はマカロフPM同様アカデミーのPPK/Sのメカを使用するコッキングガンとします。進行情況はこのコーナーでお知らせしていきます。

12月1日
 「ザ・プロテクター」の生産が伸びたため、やっととりかかったところです。ベースとなるPPK/SとHK4は同クラスの銃なので、さほど問題は生じないのではと思っていたのですが、早くもいろいろと課題が生じています。やはり、ワルサーPPを基本としているマカロフより、基本設計自体が違うHK4の方が難しいということでしょう。まず、ハンマーの軸の位置が後方すぎます。通常ハンマーの軸の位置の違いは多少ならさほど問題にならないのですが、HK4の場合、ハンマーコックしても開口しない特殊なものなので、軸がずれると外観上変になりやすいわけです。また、HK4のハンマーはPPK/Sのそれよりはるかに幅広い形状を持っています。ハンマーがプラキャストでは持たないのはわかっていますし、頭の部分だけ幅広い形状のハンマーは歯科用レジンでは作れません。そこで、やむを得ず基部を歯科用レジンで作り、幅広い頭はプラキャストで作って接着することを予定しています。
 そして、PPK/Sはグリップの前のラインがトリガーガード付け根から上で前にやや張り出しています。というか、これが普通のデザインです。しかし、HK4は張り出しておらず、上まで直線状のラインになっています。アカデミー製品ではこの張り出し部にユニットが伸びているので、このままではこういうラインにはできません。デフォルメすることも考えたのですが、ここはHK4の外観上の大きな特徴であり、大きな違和感が生じるので別の方法を考えました。この部分のユニットを削って収めるという方法です。この結果ユニットの強度が落ちます。フレームをやや厚くして少しでもユニットの負担を分担できるようにしましたが、たぶんスプリングを切るなどしてパワーを落とさざるを得ないでしょう。ハンマーが一体でなくなり、ユニットの加工が必要となるので、マカロフより組み立ての難易度は上がり、時間もかかるようになりますが、やむを得ないところです。一方、バレルはマカロフのように延長する必要がないのでその部分の手間はなくなります。またこれは製作時の問題ですが、グリップやスライドの滑り止めなどが左右非対称なのは実は楽です。正確に左右対象に作るのは結構難しいので。
 これは青井邦夫氏に教えていただいたことですが、どうも、HK4のスライド側面の凸部(滑り止めと刻印がある部分)はVP70と同じもののようです。HK4のスライドはプレス、VP70はたぶん鋳造(少なくともプレスでないことは確か)だと思うのでちょっと意外ですが、共通の別パーツを後付けしているんでしょう。VP70から型取りしようかとも思ったんですが、さほど難しい部分ではなく、VP70は持っていないので作ることにしました。なお、床井雅美氏の最新ピストル図鑑に掲載されているタイプは滑り止めが普通のセレーションになっています(たぶん後期型でしょう)が、作るのはVP70と共通の形の方です。
 HK4は売れないだろうと思いながら始めたわけですが、予想よりは反響が大きいのでちょっと驚いています。目標は20挺と考えているんですが、もしこれに達したらワルサーPPスーパーも現実的に考えられるかもしれません。北朝鮮の70式というのも考えているんですが、怒られそうな気もします。

12月7日
 …というはずだったんですが、重大な変更がありました。私はアカデミーのPPK/Sベースで作る場合、ハンマーが最大の問題だと思っていました。そしてその内容は、軸の位置が一致せず、外観上の大きな違和感が生じるのではないか、というものでした。ところが実際は、ハンマーが問題というのは予想通りでしたが、その内容がまったく違いました。
 アカデミーの銃では、単一のシアがハンマー、ピストンをコック状態で止めるようになっています。この方法はシンプルでハンマー、ピストンのレットオフタイミングがずれにくいといったメリットがある反面、両者のコックのタイミングが同時でなくてはならないという制約があります。片方をコックした状態で他方をコックしようとすると、先にコックした方がレットオフしてしまうわけです。そして、この銃にはブリーチはなく、ブリーチ後部にあたる垂直の板(スライドの一部)がスライド後退時にハンマーを押し倒してコックします。HK4のハンマー形状を再現すると、ピストンがコックされるタイミングにはこの板はハンマーを通りすぎてさらに後退してしまいます。するとピストンのコック時、ハンマーはスライド内部に倒れこみ、スライドが前進できなくなります。何とかこの問題を解決しようと、スライド、ハンマー、シア、ピストン、スプリングガイドと考えられるパーツすべてに大幅な加工をした結果、この問題の解決は事実上不可能であるという結論に達しました。
 ここで選択肢は2つになります。すなわち、「ハンマーをダミーにする」と「アカデミーベースの再現をやめる」です。前者は、可動部分が極端に少ない上にユニットの大改造が必要な分マカロフより組立がはるかに困難になり、しかもパワーを大幅に落とさないと強度的に持たない、ということで製品としての魅力に欠けるだろうと判断し、後者を選択しました。
 HK4の再現自体を断念することも考えたのですが、やはりこの銃を作りたい気持ちが強く、モデルガン形式での再現に決定しました。
 プラキャストでダブルアクションオートのモデルガンを作るのはかなりの無理があります。また、HK4はかなり複雑巧妙な設計になっており、この中でも比較的難しい方でしょう。P9Sのようにパーツ数が無茶苦茶に多くて複雑、というのではないのですが、例えば単一の肉の薄いプレス鉄板製パーツが、スライドストップ、マガジンセーフティ、エジェクターの役割を兼ねているなど、精度の低い素材、製法では再現しにくい構造なわけです。このため、従来のようなフル可動に近いものにはなりません。また、送弾、排莢も無理だと思います。
 現在考えているギミックは以下のようなものです。
「スライドが引け、バレルに巻かれたスプリングによって復帰する。」 これは問題ないでしょう。
「ハンマーがSAのみ連動する。」 SAオンリー、DAオンリーの再現は可能ですが、DA、SAのオートはちょっと無理だと思います。とすれば、SAにするのが妥当でしょう。なお、ベレッタのようなトリガーバーがディスコネクターの役割をする機種なら可能ですが、HK4のような独立したディスコネクターを再現するのは無理だと思います。
「マガジンキャッチの操作によってマガジンが着脱できる。」 これも問題ないはずです。
「トリガーガード内のラッチ操作によってワンタッチで分解できる。」 これも問題ないと思います。
ここまでは再現できるはずです。さらに可能なら実現したいのが以下のようなギミックです。
「セーフティを下げるとファイアリングピンの後端が下降してハンマーの打撃面から外れ、さらにフレームの段差に当たって前進できなくなる。」 技術的に困難はないと思うんですが、セーフティの中央部をきわめて肉の薄いブリッジでつながなくてはならないのでその部分が不安です。デコックは無理ですが、元々HK4にはデコック機能はないので好都合です。なお、ファイアリングピンを再現する場合は、前面から出し入れするので、どのみちブリーチ前面を別パーツにしなくてはなりません。それならばブリーチ前面をリバーシブルにして、センターファイア、リムファイアを切りかえられるようにしてみたいです。
「マガジンを抜いてスライドを引くとホールドオープンする。その状態でマガジンを挿入すると自動的に前進する。マガジンを挿入しなくてもトリガーを引くとスライドが前進する。」 変わった特徴ですが、実銃もこうです。この他、特殊なディレードブローバックシステムは金型では再現できませんが、ゴム型なら簡単なので、再現したいと思います。

 これより最初から作業をやりなおします。試作品完成は1月末、発売は2月中旬くらいになるのではないかと思います。

12月14日
HK4製作途中1HK4製作途中2

  いまこんな感じです。トリガーガード内のラッチ操作により、スライドが1cm弱前進したのち上に外せる、という部分は問題ないようです。そして、セーフティをかけるとファイアリングピン後部が下降し、前進をブロックされるのも可能のようです。ただ、肉厚をとらねばならない関係上、下降のストロークが小さくならざるを得ず、精度の低いモデルでファイア時には確実にファイアリングピンを叩き、セーフ時には叩かないということになるかはちょっとまだ微妙です。ただ、この銃はハンマー半内蔵といった形状で、ちゃんと叩いている、いないは外部からはほとんどわからなかったりします。ちなみに前回下降したファイアリングピンがフレームの段差に当たって前進をブロックされると書いたのは誤りで、正しくはブリーチブロック内の段差です。HK4には、セーフティをかけないと分解できないという変わった特徴があります。これを再現したかったのですが、理屈上は簡単なものの、ファイア状態でスライドを前進させようとすると勝手にセーフティがセーフに入って前進してしまい、ちょっとこの素材、精度では無理のようです。ブリーチ前面を着脱とし、リバーシブルにするのは簡単ですが、リムファイアに変えるのは難しいようです。実銃はプレート状のパーツをネジ1本で固定しています。このネジの位置は端寄りですが、モデルではスライドの肉厚をとらねばならない関係上、さらに端になってしまいます。精度、剛性の低い素材で、板状のものを端の1点だけでネジ止めしてもきちんと固定されません。ネジを締めるほど反対側が浮き上がってくるようになるわけです。このためネジの位置を中央寄りにアレンジせざるを得ず、リムファイアのファイアリングピン先端位置(HK4ではリムの上端を叩くようになっているので)にかかってしまうわけです。
 これからトリガー・ハンマーメカに入ります。HK4はHScとほぼ同じメカとされていますが、細部にはけっこう違いもあり、最大の違いのひとつがこの部分です。HScではディスコネクターにはその機能しかなく、トリガーバー後端上部が前進時にハンマー下部をひっかけて起こす、現在のベレッタのようなオーソドックスなメカになっています。これに対しHK4では、ディスコネクターがダブルアクションシアの役割を兼ねるという変なシステムになっています。HScの方が明らかにナチュラルで、どうしてこんな変更をしたのかはわかりません。実際、HScのダブルアクションプルは高く評価されていますが、HK4は重い、ジャリジャリすると不評のようです。この方式は複雑微妙すぎてプラキャスト製モデルでは再現がとうてい不可能ですから、まずシングルアクションを再現し、もし可能ならばHScのような単純なダブルアクションをおまけ的に追加することを検討します。

12月16日
 メカがほぼ固まりましたのでお知らせします。たぶん今後メカ、ギミックに関し大きな変更はないと思います。ギミックは、
「ハンマーがSAで作動する。」
「セーフティをかけるとファイアリングピン後端が下降してハンマーの打撃面を外れ、ブリーチブロック内部の段差に当たって前進をブロックされる。」
「マガジンを入れていない状態でスライドを引くとスライドストップがかかり、マガジンを挿入する、またはトリガーを引くことによってスライドが前進する。」
「コンチネンタルタイプのマガジンキャッチの操作によってマガジンが着脱できる。」
「ラッチ操作によってワンタッチで分解できる。」
といったものになります。やはり素材、製法の関係上肉厚を取らねばならない、精度が低いため余裕を見なければならない、といったことが随所でネックになってきました。トリガーバー取り付け位置がトリガーの軸に接近した結果トリガーバーのストロークが短くなり、やはりダブルアクションは無理のようです。トリガーを引くことによるスライド前進は一応再現可能ですが、これはおまけ的なものになります。というのもディスコネクトできないのでこれをするとハンマーも同時に戻ってしまいます。ちなみにトリガーバーが直接スライドに押し下げられる形のディスコネクトを再現しても、トリガーバーのスライドストップを押し上げる突起まで下降してしまうのでこのギミックの完全な再現はどっちみち不可能です。ブリーチ前面の板はリバーシブルの形状は大筋再現し、実際逆に取りつけることも可能だと思いますが、前に書いた理由によってリムファイアへの切り替えはできません。なお、チャンバーに.380ACPのダミーカートを入れることは可能ですが、スライドを引いても排出はされません。
 この再現度では不満という方もいらっしゃるでしょうが、これでもかなり複雑でパーツ数も増えてしまっているので、このギミックを確実に再現し、なるべく安価に販売することを目指します。
 いまちょっと不安な点として、ハンマーストラットの素材をどうするか、という問題があります。ハンマーストラットはハンマースプリングの軸となり、ハンマースプリングの上部がハンマーを動かし、下部がマガジンキャッチを動かすという実銃通りの形を考えています。原理的には全く簡単なんですが、細長いパーツなので歯科用レジンには向かず(側面を平らに削り落とす作業が非常にやりにくいため)、プラキャストでは強度的に持ちそうもありません。プラキャストに芯を鋳込む方法でいければいいんですが。

12月21日
HK4製作途中3HK4製作途中4

 今こんな感じです。メカが固まったので、スライドまわりから細部の造形に入りました。 
 トリガー、トリガーバー、スライドストップ、ハンマーストラット、シア、ファイアリングピンと、細くて強度が要求されるパーツが多いので量産時にけっこう苦労しそうです。ちなみにリコイルスプリングは九四式のとき特注で作ったものの残りを流用することを考えています。価格は未定で、何をどんな材質で作るかが決まらないと何とも言えませんが、完成品2万円、キット1万円を大きく越えないようにしたいと思っています。リアルな再現が困難ということで避けてきたダブルアクションオートのモデルガン形式ですが、もしこれが受け入れられるようなら例えばマカロフのモデルガンなども考えられますし、これでは満足できないという方が多ければ最初で最後の再現になるでしょう。個人的にはワンタッチで分解できるギミックだけでも結構楽しいように思うんですが。
 基本的には.380ACPのモデルを再現しますが、肉厚を取らないと持たないマガジンには.380のダミーカートは入りません。空マガジンの再現では緊張感を欠くという方も多いので、マガジン上部には.32ACPをセットすることも考えています。

1月1日

HK4製作途中5HK4製作途中6

 造形が大部分終了しました。グリップのチェッカリングなど一応表面処理をしてから造形した方がいい部分もあるので、現在はすでにサーフェイサーをかけて表面処理に移っています。作っていて、なんだか大きすぎないか、と不安になりましたが、実物大にした側面写真に重ねながら作っているので間違いないはずです。しかしこれではPPK/Sより明らかに大きいだろう、と思って比較しようとしましたが、考えてみると私はPPK/Sのモデルガンを持っていません(PPKに改造した奴ならあるんですが)。そこでマルシンのキットを買いました。これを組んで比較してみると、全長や全幅を数値にするとほとんど差がないんですが、印象としてはやはり明らかにひとまわり大きいです。実際体積にすれば2割近く大きいんではないでしょうか。グリップが大きめであること、アルミフレームなのでスチールフレームのPPK/Sよりフレームが肉厚であること、薄いスチール板をプレスしたスライドの重量をなるべくかせぐためスライドも大きめになっていること、などが理由ではないかと思います。
 予想より進行がやや早いので、1月20日頃試作品完成、2月10日くらいまでには発売できるのではないかと思います。

1月5日

HK4製作途中7

 仕上げ段階に入り、簡単な形のパーツから型取りも始めました。
 さて、私の作るものをずっと見ている方なら、ちょっと不自然なまでにチェッカリングの入ったプラスチックグリップを作ることを避けてきたことにお気づきでしょう。木製風グリップは作ったことがありますが、チェッカリングの入ったプラスチックグリップは実は製品としては作ったことがほとんどありません。「ほとんど」というのは少数販売したAK74風グリップがあるからですが、これはチェッカリングが単なる長方形で非常に作りやすいものでした。ちなみにCz27とマカロフは実物からの型取りで自作ではありません。ジェットファイア、九四式(あれはハードラバーですかね。まあここでは同じことです)もプレーンな木製風で製品化しました。AK74を例外とすると、この前チェッカリングの入ったプラスチックグリップを作ったのはアームズ用のP230以来ではないかと思います。あれから7年以上経っています。何故かはもうお分かりでしょう。苦手だからです。チェッカリングのある部分とない部分の境界線がきれいに仕上がらないんです。HK4では、初期にプレーンなプラスチックグリップが実在しますが、いくらなんでもそれではダメだろうということで、今回久々に挑戦しました。右側の比較的単純な方はまだいいんですが、左は形がやや複雑、上下2段に分かれていて角度が違うと目立つ、フィンガーレストの曲面にかかっている(上)、真ん中にトレードマークが入っている(下)と作りにくい条件が揃っています。ここは正直自信が持てない部分ですが、まあ現時点でのベストということでご勘弁いただきたいと思います。
 型で作るパーツはこの写真のような感じで、点数は19点です。あとひとつ単純なパーツを追加する予定ですからたぶん20点になるでしょう。うち、ハンマーとシアだけ歯科用レジンで作り、他はプラキャストにするつもりです。ファイアリングピン、ハンマーストラット、トリガーバー、スライドストップの4点はそのままでは強度不足なので芯を鋳込んで強化する必要があるでしょう。
 いつもならリアサイトは一体にするところですが、今回は別パーツとしました。必ずしもグレードを上げようという意図ではなく、真ん中に谷があるリアサイトは左右分割の型で抜くときに障害になるので、この方が逆に楽ではないかと思ったからです。
 ウェイトはバレル内、マガジン内、グリップ内に入る予定です。
 無理だと思っていたんですが、この分だと来週のイベントに試作品が間に合うかもしれません。

1月9日

 作り直さなくてはならない型がいくつかあり、補強材の種類や塗装を変更する必要がありそうですが、まあとりあえず、

ということにしておきます。スライドストップの剛性不足によりトリガーを引くことによるスライド前進ができていませんし、精度の不足によってファイアリングピンのロックができていませんが、これらは簡単な修正で済むはずです。それ以外は完全に機能しており、けっこう面白い製品になるのではないかと思います。
 意外に短時間で完成することができました。組み立ても時間はかかるものの難しい部分はあまりないと思います。

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