1.12.5 傾斜バレル、および方向転換リボルバー(頑住吉注:「Kipplauf und Schwenkrevolver」。ブレイクオープンとスイングアウト式リボルバーのことです)

 リボルバーの装填はパーカッション前装銃からカートリッジリ式ボルバーへの移行によって決定的に簡単になったが、装填跳ね蓋オープン時の空薬莢の突き出しと弾薬の挿入は、まだ改良に値した。我々はここで有用と証明されている2つの解決法に言及したい。その1つはバレルとシリンダーがシリンダー前下方に位置するヒンジをめぐって傾けることができる傾斜バレルリボルバーである。このシステムはスミス&ウェッソンのモデル3リボルバーによって普及した。我々はいくらか後にそれを、特別により確実、より単純な形でウェブリー&スコットリボルバー群に見いだす。これは1887年から1955年までイギリス陸軍に使用されたものである。

 図1-57は、S&Wによってモデル3の中に使われたシステムを示している。使用者がロック(5)を上に跳ね上げると、バレル(1)とシリンダーは一緒に前方の軸をめぐって回転できる。その際星形のケースエキストラクターが全ての薬莢または弾薬を同時にシリンダーから持ち上げる。このエキストラクターの運動は「Zahnsegmentrad」(3 頑住吉注:辞書に載っていませんが、「歯+節+輪」、要するに一部にしか歯のないセクターギアのことです)によって引き起こされる。その歯はシリンダー軸内に位置するエジェクターロッド(2)をグリップしている。「Zahnsegmentrad」はバレル・シリンダーモジュールをリボルバーのフレームと結合している軸上で回転する。「遮断するもの」(4)は「Zahnsegmentrad」の銃をオープンする際の回転を防ぐ。オープン運動の終わりに、バレル本体上の張り出しが(頑住吉注:「遮断するもの」の、この図で)左下に位置する張り出しを通じて「遮断するもの」をレスト位置から持ち上げ、「Zahnsegmentrad」をフリーにする。この結果エキストラクターロッドの内部に位置するコイルスプリングがエキストラクターを再びシリンダー上に引き戻す。これで銃は装填可能になる。

図1-57 S&W Model3リボルバーの薬莢エキストラクター (頑住吉注:銃のオープン時、シリンダーロッド内部のコイルスプリングが圧縮されるため、セクターギアには反時計方向に回転しようするテンションがかかります。しかしセクターギア下部のカム状の突起が「遮断するもの」のフックによってひっかけられているので回転できません。いっぱいにオープンするとき、着色していませんがセクターギアの左にあるバレルグループの一部が「遮断するもの」に当たり、反時計方向に回転させることによってセクターギアとのかみ合いは外れ、セクターギアはスプリングのテンションによって反時計方向に回転し、これとともにエジェクターが引っ込むわけです。なお、黄色のフックの前下部を押し込むと、赤のパーツとのかみ合いが外れてシリンダーは後方に抜けます)

 オートマチックな弾薬エキストラクターを持つ傾斜バレルリボルバーは、他の全てのタイプより素早く装填できる。というのは、銃がオープンされた際にはチャンバーの開口が完全にフリーになっているからである。

 コルトは1889年に、シリンダーの素早いロードおよびアンロードのために他の方法を導入した。すなわち方向転換リボルバーである。この銃ではシリンダー軸が小さなブリッジを通じてヒンジ軸と結合されている。このヒンジ軸はフレーム内、シリンダーの下側をシリンダー軸と平行に走っている。図1-47でその原理が分かる(頑住吉注:「ハンマーに関節結合されたダブルアクションシアを持つダブルアクション銃の発達」の項目で出て来たコルトオフィシャルポリスの図のことです)。シリンダーは星形のエジェクターを備えている。このエジェクターはエジェクターロッドへの圧力によって後方に動かされ、この際に薬莢または弾薬はチャンバーから除去される。1本のスプリングがエキストラクターのレスト位置への自動的な後退に配慮している。この構造では銃は閉じられたフレームを持っている(頑住吉注:初期コルトリボルバーのようなシリンダー上部にフレームが通っていないタイプでも、フレームがヒンジによって開くタイプでもない、一体のフレームがシリンダーを囲んでいるタイプのことです)。この構造は今日ほとんど全ての高級な銃に使われている。伝統上の理由から装填跳ね蓋が使われているシングルアクションモデルを度外視するならば。


 かなり期待して読んだんですが、残念ながらこの項目はちょっと期待はずれでした。ブレイクオープンリボルバーに関しては、「スミス&ウェッソンのモデル3リボルバーによって普及した」とあり、言うまでもなくこれはこの銃が元祖であることを意味しません。スイングアウトに関しても「コルトは1889年に、シリンダーの素早いロードおよびアンロードのために他の方法を導入した」とあり、これも元祖であることを意味しません。ブレイクオープンに関してはそれ以前に存在したシリンダー前上部にヒンジがあるタイプ、またモーゼルリボルバーのように後上部にヒンジがあるタイプに全く触れられていません。スイングアウトに関してもアイバージョンソンなどが試みた垂直の軸を持つ形態の異なるスイングアウトに触れられていません。また、似た目的でありながらまったく別の方法を取った、バレル・シリンダーグループがストレートに前進してチャンバー後部を開放する方法にも触れられていません。まあ銃器発達史全体からすればさして重要ではないということで触れなかったんでしょうが、できればこうしたさまざまな試行錯誤にも触れて欲しかったところです。










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