M1877ライトニング製作記

これはM1877ライトニングの製作情況をリアルタイムでお知らせしたものです。なお、他のページと重複する画像は削除しました。


2005年4月25日 
「Visier」2005年3月号に、コルト初のダブルアクションリボルバーであるM1877ライトニングの記事が掲載されていました。結構有名な銃なのに、初めて見るまとまったレポートでした。

 この銃は過去2回作ったことがあります。1回目はアームズの製作記事用で、マルシンのSAAをベースにしたものでしたが、そもそもSAはライトニングよりひとまわり大きいので、あくまでもどきカスタムでした。2回目はコクサイのKフレームリボルバー(←正確には覚えていなかったり)をベースにしたステージガンで、リアルサイズでしたが当然S&Wリボルバーの構造のまま外観だけ似せたものでした。

 2回も作ったことがあるのはこの銃が好きだからで、この銃が活躍する「ヤングガン2」にはしびれたもんです。いままで製品化しなかったのは、ひとつには資料が少ないこと、もうひとつはメーカーとかぶる可能性が高いと思ったからです。

 今回の「Visier」の記事でそれが2つとも解決…とはいかないまでも大筋解決したかなあということで製作を決めました。資料が揃ったのはいいとして、何故このレポートでメーカーとかぶる可能性が少ないと判断したのか不思議に思われるでしょう。

 この記事には、この銃には「間違った開発」というイメージがあってレアな割に比較的値段が安い、すなわち欲しがる人が少ない、そして事実現存する多くの銃が作動不良を抱えている、旨の記述がありました。私はこういう事実を知らなかったのでちょっと驚き、アメリカの資料も見てみたところ、やはり「史上最悪のDAリボルバーのひとつ」といった記述がありました。実は以前、この銃を某メーカーが製作しようとしたが、「これは鉄で作らない限り動かない」と判断して断念した、という未確認の噂を聞いたことがあるんですが、あまり重く考えていませんでした。実銃がちゃんと動いている以上、うまく処理すれば動かないはずがない→本当かなあ、と思ったわけです。ところが実は実銃も、少なくとも長い時間が経ったものの多くはちゃんと動いていなかったわけです。ご存知のようにSAAにはバーズヘッドタイプのグリップを装備したライトニングもどきレプリカが存在します。したがってレプリカの需要はある程度はあるわけですが、いまだかつてまともなレプリカは生産されたことがないそうです。「知識の断片」のコーナーで紹介したレミントンローリングブロックなど、結構マイナーなウェスタン系の銃のレプリカはたくさん存在し、少なくともそれらよりは商売になりそうなのにレプリカの前例がないということは、実銃レプリカメーカーもこれは(当然鉄を主な素材に)作ってもトラブルが多発してダメだと判断しているんでしょう。また、この銃は小さいとはいえ握ってしまえばSAAそっくりに見えるはずです。西部劇で、銃の扱いに不慣れな役者が連射するときモダンなDAリボルバーが代役を務める事がありますが、この銃はその役割に非常に向いているはずなのにそうした使われ方をしたという話は聞いたことがありません。要するに実銃もレプリカもまともに動かすのが難しいわけでしょう。

 ましてモデルガンでは当然もっと困難なわけです。昔はともかく現在では量産メーカーのモデルガンは構造までリアルに再現しないと受け入れられにくいですから、量産メーカーがこの銃に手を出す可能性はきわめて低いと判断したわけです。

 ここまで書けば当然分かりでしょうが、量産モデルガンよりかなり精度、強度の低いガレージキットでこの銃のメカをリアルに再現することはまったく不可能です。したがってメカは大幅にアレンジします。もちろんこれでも非常に困難です。

 問題は

1.原型段階でちゃんと動くか
2.原型を型で抜けるような形にまとめられるか
3.誤差が生じる複製品でもちゃんと動くか

 の3つになります。現在1.はほぼクリアできる見込みが立ちましたが、2.および3.はまだ分かりません。というわけで、中止の可能性がまだ20%くらい残っています。

 これはコルト社による正式名称ではないんですが、.38口径がライトニング、.41口径がサンダラーと通称されており、再現するのは前者、銃身長3インチのエジェクターを持たないタイプです。ちなみにビリー・ザ・キッドが使用したという3インチのサンダラーが現存していますが、本当に彼の持ち物だったかの確証はないようです。

 製品は、外観と主要パーツの構成をできる限り実銃に似せ、ギミックはDAで作動してシリンダーが回転すること、装填、排莢ができることに絞る予定です。予定というのは製品化が実現したらという意味で、これ以上リアルになる可能性はゼロです。大変に残念ですが、SAは省略せざるを得ません。また、シリンダーストップは実銃通りシリンダーの後方から前進して作動し、通常のようにシリンダー外周にラッチがない外観は再現しますが、実銃とは違い、トリガーを引いたときだけシリンダーを固定する構造に簡略化します。これ以外にも人によっては拒否反応が出ると思われる大胆なアレンジを行いますが、少なくとも私にできるのはここまでであり、また今後この銃を再現した製品が発売される可能性はきわめて低いということでご勘弁いただきたいと思います。なお、商品名は「M1877ライトニング」になると思います。

 進行状況は逐一このコーナーでお知らせします。

4月26日
 今こんな感じです。



 ローディングゲートを除けば機能はもう揃っており、後は基本的には造形だけです。しかしSAAも同じですがこの銃のシリンダー後部の半球状の部分は非常に作りにくい形状であり、苦労しそうです。

5月4日
 


 いつも通り実物大に拡大した実銃写真に重ねながら造形を進めています。球状の形を手作業できれいに削りだすのはきわめて困難ですから、東急ハンズで適当な大きさの球を探してきて、これを複製して切断、接着しました。ローレットが切られたシリンダー軸の先端部は、ちょうどいい太さで似たようなローレットが切られた皮ポンチがあったので複製して使いました。プラキャスト製で傷つきやすいのでマスキングテープで保護してあります。

 さて、この銃で最大の問題は独特のシリンダーストップです。シリンダー後面にノッチが切ってあってこれにかむわけですが、この銃はカウンターボアードにはなっていないので、リムはシリンダー後方に突出しています。シリンダーストップ前面はリムの厚み分大きく前進しないとシリンダーに到達できません。シリンダーの後退を許すためにいったん後退するタイミングが遅ければ、シリンダーストップ先端にリムがひっかかってシリンダーを止めてしまいます。また前のリムがある間は当然前進できず、リムが通過したらすぐさま大きく前進しないとシリンダーを止め損ねてしまいます。思い切り速射するときなど、許された時間はきわめて短いことになります。



 要するにこんな感じですね。濃い青がシリンダー、黄色がリム、空色がフレーム、赤がシリンダーストップです。どう考えてもこれはちょっと無理のあるシステムだろうという気がします。現存する多くの銃が作動不良を抱えているというのも無理ないですね。鉄で作っても長時間たつとちゃんと動かなくなるものが多いこのシステムをトイガンで再現するのは不可能に近く、ましてガレージキットではとうてい無理です。そこで外観を「ほとんど」崩さずにより確実に作動させる方法を考えました。まだ時間がありますからどんな方法かちょっと考えてみてください。実銃では不可能な方法です。

 次に困難なのはローディングゲートの再現です。ご存知のようにこうした銃ではローディングゲートの軸にきわめて強いスプリングでテンションをかけてクリックストップさせています。しかしガレージキットではそんなに強いスプリングは使えません。すでに絶版になっている東京マルイのブラックホークでもクリックが甘くて使用感がいまいちの感じでしたが、当然それ以下にしかなりえません。そこでここも全く別の方法を盛り込む予定です。

5月11日

 まだグリップに手をつけていませんが、そろそろ仕上げ段階に入ります。グリップは固定ネジのないワンピースタイプ、初期のチェッカー入りローズウッド製を再現する予定です。

5月20日


 サーフェイサーをかける直前の状態です。この銃は形状上、仕上げにかなり時間を要しそうです。

5月29日


 かなり苦戦しておりますが、もうそろそろ完成が近いと思われます。いつも通りグリップはいったんプレーンな状態で完成させ、(失敗しても大丈夫なように)複製品にチェッカリングを彫る予定です。ただ、このように強い曲面にチェッカリングを彫るのはきわめて難しい作業で、場合によっては製品もプレーンになるかもしれません。木製ではどうかわかりませんが、パールやアイボリーのプレーングリップは実在しています。

6月8日


 昨日複製品が組みあがりました。まだ多少手直しの必要がありますが、作動も問題なく、これで発売中止という可能性はほとんどなくなったと見ていいでしょう。たぶん今月中には完成品から発売できるはずです。

6月13日
 数日間この曲面のきついグリップにチェッカリングを彫ろうと努力してみたんですが、結局何と申しますかこれならスムーズの方がましではという仕上がりにしかなりませんでした。調べなおしましたが、木製のスムーズグリップは実在します。また、スムーズならキットを購入した方が銃をシルバー、グリップをアイボリー色に塗装する場合もむしろ都合がいい、ということでちょっと心残りではありますが、グリップはスムーズで行くことにしました。ただしいずれの場合もスムーズのグリップは全てツーピースらしいので、予定を変更してツーピースにしました。ということで、

 価格は未定ですが、完成品23,000円、キット12,000円くらいになるのではあるまいかと思います。















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