実銃PDWに関する最新情報

※これを書いてからずいぶん時間が経過し、とても最新情報とは言えなくなりました。「知識の断片」コーナーに発展型であるMP7A1の項目があるのでそちらも参照してください。

 「SMALL ARMS REVIEW」誌2001年4月号にPDWに関する情報が掲載されていました。主にこれに基づき、PDWに関してその後に分かったことなどを、できるだけ詳しくお伝えします。
 PDWが我々の目に触れるようになったのは一昨年暮れ頃ですが、試作モデルのテストはすでに4年以上も続いているそうです。現在、専門誌、公的機関の「将来のユーザー」たちに限定的に見せてご意見を伺っている、という段階です。生産は2001年の遅い時期、と見られており、要するにまだ供給、使用は始まっていません。ガレージキットは実銃より1年以上も早く発売されてしまったわけです。現在約40挺が世の中にあり、いまだに実銃より数が多いかもしれません。

 PDW用の弾薬、4.6mmX30は弾頭の重量が25グレインとなっています。.22LRですら40グレイン、9mmパラベラムなら115グレイン、.45ACPなら230グレイン、M16A1用の5.56mmX45が55グレインですからいかに軽量かわかります。一般的な弾頭は鉛を銅でカバーしたものですが、PDW用の弾頭はスチールを銅でカバーしたものです。この弾頭は旧ソ連のスペツナズも使用していたケプラー20層、1.6mmチタン板を含む軍用ボディーアーマーを200m以上から貫通した上に装着者に致命傷を負わせる可能性を持ち、50m以内なら2枚をまとめて貫通できる性能を持っています。話がちょっとそれますが、ここでちょっと疑問が生じました。私はPDWの弾頭はP90のものより重く設定されているために威力が大きく、このため射程が長いかわりにストレートブローバックにはできずガスオペレーションを採用した、と理解していたのですが、違ったようです。P90用弾頭は31グレインとなっており、PDWより重いんです。初速はデータ上わずかにPDWが速いですが、わずかな差です。メーカーはPDWはP90より実用有効射程距離が長いと主張していますが、根拠はあるんでしょうか。重い弾の方が長距離飛翔後の残存エネルギーは大きくなるはずなんですが。径が小さい分空気抵抗が小さいということもあるんでしょうか。まあ、メーカーのセールストークは100%真に受けない方がいいのかもしれません。
 弾薬には全銅製のCQB用弾薬もあり、尖頭弾とスプーンノーズの2種があります。貫通力が大きくなり過ぎないためのもので、特に後者は弾頭に斜めにえぐったようなくぼみをつけ、人体に命中後すぐ転倒させて貫通しにくくするものです。これとは別にローエンフォースメント用ホローポイント弾、ダミー、ブランク、トレーサー(.22以下の超小口径弾はトレーサーが作りにくいとされていますが)もあります。

 弾頭が非常に軽いだけあってリコイルは軽く、.22LRのライフルに似た射撃フィーリングだといいます。P90と違ってデザイン上片手でも射撃しやすく、熟練すれば100mからマンターゲットに命中させられるようです。ストックを伸ばした場合、100mのグルーピングは3インチ、200mでは8〜12インチとなっています。これはメーカーの主張ではなくSMALL ARMS REVIEW誌のテスト結果です。日本の専門誌のトイガン情報と同じでこれも100%の信頼はおけないかもしれませんが、少なくともメーカーが言っているだけよりは信憑性が高いでしょう。リコイルが9mmサブマシンガンよりはるかに小さいためフルオートでのコントロールも楽で、動標的に対する命中率も高くなるといいます。フルオートでの発射速度は毎分700発とあります。ここでも「あれ?」と思いました。従来は発射速度は毎分950発となっており、こうしたコンパクトな銃の場合発射速度は過大になる傾向にあるのでそれで納得していたんですが。従来のデータはメーカー発表またはそれの書き写しだったはずですが、SMALL ARMS REVIEW誌は実射テストをしており、情報としても新しいのでこちらが正しい可能性が高そうです。
 発射速度にも影響するメカニズムですが、ガスオペレーション、回転閉鎖式ボルトの他に、「ショートストロークピストン」という情報が加わりました。私はこのメカを採用している銃としては他にM1カービンシリーズしか知りません。他のガスオペレーションはピストンがガス圧でほぼフルストローク後退するのに対し、ショートストロークピストンはごくわずかな距離だけ後退してボルトキャリアを後方に押し、後はボルトキャリアが慣性で後退するものです。ただ、名前が同じなだけですからPDWのシステムがM1カービンにどれだけ似たものなのかは不明です。
 ボルトストップがある、と書いてあるんですが、どこにもそれらしいものが見当たりません。想像ではボルトフォワードアシストが兼用しているんではないかと思います。ボルトストップはすばやく操作できないと生死に関わりますから、後方に引く、上に持ち上げるといった簡単な操作でボルトストップが解除されるようになっているんではないでしょうか。

 バレル先端にはフラッシュハイダーはなく、突き出しもわずかなので、どうやってサイレンサー等のアクセサリーを装着するのか疑問でしたが、レンチで簡単にバレルが交換でき、アクセサリー装着用のバレルに交換する必要があるそうです。PDWはフォアグリップがたためるのでハンドガン感覚でホルスターに収納でき、両手がフリーにできる、というのも長所だとされています。用途としてはVIP警護、パイロット、ドライバー、砲兵、軍医、通信兵、対戦車兵器クルー、憲兵、水兵、メカニック、補給部隊などの自衛用、そして特殊部隊での攻撃用などとなっています。

 このほかの新しい情報を列挙します。重量が1.2kg(空20連マガジン装着時)、1.3kg(ロードした20連マガジン装着時)、1.54kg(ロードした40連マガジン装着時)。バレルはクロームメッキされたポリゴナルライフリング(6条右回り)でハンマーフォージド製法。弾薬は現在1発9セント、銃は予価900ドル〜1000ドルとなっています。

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