イーサン・アレンのペッパーボックス 製作記

これは製作情況をリアルタイムでお知らせしたものです。なお、他のページと重複する画像は削除しました。


 ペッパーボックスはバレルとシリンダーが一体になった古風なリボルバーです。通常型リボルバーより古いもののように思いがちですが、実は本格的なものが登場したのは同時期(1830年代後半)です。しかし、コルトに代表される初期の通常型リボルバーには問題も多く、また非常に高価だったため、庶民の手にはなかなかゆきわたりませんでした。一方ペッパーボックスは当時としては信頼性が高くて使いやすく、非常に安価だったため、広く普及したのです。アメリカで最もメジャーなペッパーボックスであるイーサン・アレンのそれは、1830年代後半から1850年代に入る頃まで、コルトよりはるかに高い商業的成功を収めていました。アメリカ初のダブルアクション・リボルビングファイアーアームズでもあり、通常型リボルバーがダブルアクション化されはじめる1870年代頃まで、最も速射の利くハンドガンでした。
 通常型リボルバーの性能、機能が向上し、また安価になってくると、大きく、重くなる傾向があり、命中精度が低いペッパーボックスの人気は急速に下降していきました。要するに、ペッパーボックスはシリンダーの停止位置とバレルを一致させる必要がないために精度が甘くても許され、技術水準が低くても簡単、安価に大量生産でき、このため通常型リボルバーより発達が早くて一時的に大流行したというわけです。全盛時代がわずか10年あまりとはいえ、ペッパーボックスは確実に一時代を築いた形式であり、銃器発達史上特筆すべき存在といえます。
 次期新製品は、このイーサン・アレンのペッパーボックスをモデルガン形式で再現する予定です。おそらく国内では最初で最後のペッパーボックスを再現したトイガンとなるでしょう。

6月2日

 

 おおよその機能が出揃った状態です。トリガーを引くとバレルグループが回転し、ハンマーがダブルアクションで作動します。パーツ形状はアレンジしなくてはなりませんが、メカニズムはほとんど実銃そのものにできそうです。細かいスプリングはコイルにアレンジせざるを得ませんが、今回はこの写真でもお分かりのようにメインスプリングを板バネ(グラスファイバーを鋳込んだプラキャスト製)にする予定です。実銃通りのトリガープル調節も可能なはずです。
 この型のペッパーボックスでは、パーカションキャップはバレルグループ基部の周囲に並んでいます。カート式リボルバーではラチェットが中央の非常に小さいものにならざるを得ず、これをハンドで正確に押し上げるアクションには精密なものが要求されます。この型のペッパーボックスなら、ラチェットが後部いっぱいの大きなものにでき、その分精密さがいらなくなるわけです。ですから通常型のリボルバーのシリンダーを回すよりはかなり楽なはずです。
 アイバージョンソンのリボルバーの多くもそうでしたが、アレンのペッパーボックスも、例えば「M1945」などといったはっきりしたモデル名がついていません。共同経営者と会社名、場所が変わっているのでそれによる分類、1837年パテントモデルと1845年パテントモデル、大型、中型、小型というサイズによる分類、トリガーが普通のものとリング状のもの、グリップの角度による分類などがコレクターによって行われていますが、かなりややこしいです。今回再現するのは、資料が豊富にあり、デザイン的に気に入ったもので、比較的後期の中型モデルということになります。
 この分だと6月20日頃には原型が完成しそうな感じです。

6月5日

 今こんな状態です。そろそろサーフェイサーをかけて表面仕上げ段階に入ります。

6月7日
 表面仕上げ段階に入りました。
 アレンのペッパーボックスはフレームが湾曲したパイプ状になっています。たいていの銃のフレームはABS板の積層から削りだすわけですが、この形はその方法に適していません。そこで今回は太い塩ビパイプに切れ目を入れて曲げ、隙間を歯科用レジンで埋めたものから加工しました。サイドプレートがあるので慎重にピラニアソーで切開しています。パイプ状のフレーム形状はバレル、ハンマー、トリガー等の軸の水平を見極めるのが難しいです。
 バレルは塩ビパイプを束ねたものを基本に、周囲にプラ角棒を貼って太いパイプの内径ぴったりとし、プラキャストを流し込んで肉を増やしました。硬化した後に外のパイプを切り開いてとりのぞき、ここからフルートを削りだしています。完成後にマズルの形状を見てもらえばパイプの束に単純にパテ盛りして削りださなかった理由は分かっていただけるはずです。
 ダブルアクションメカは最古のもののひとつです。メインスプリングがダブルアクションシアのスプリングを兼ねているという巧妙なもので、現在の目で見ると珍しい印象を受けます。トリガーを引くと、シリンダーハンドにあたるパーツが押し上げられてバレルグループが回転するわけですが、トリガーとハンドの関係も現在のリボルバーとはかなり違っています。独立したシリンダーストップ(に当たるパーツ)がありますが、これはトリガーと一体の動きをするので機能的にはトリガーの一部がシリンダーストップを兼ねる形式と同じです。現在のほとんどのリボルバーは、ハンマーコックの一時期のみシリンダーストップが解除され、トリガーを戻すときはシリンダーがロックされたままになるようになっています。一方シリンダーストップがトリガーと一体の形式は、トリガーを引ききったときしかロックされません。トリガーを戻すとき、ハンドはラチェットにシリンダーを逆回転させる弱い力をかけますから、何らかの逆転防止策が必要になります。アイバージョンソンセーフティーハンマーの初期モデルなど(ちなみに「ザ・プロテクター」も同じです)はシリンダーに板バネの抵抗をかけ、弱い力では逆回転しないようになっています。ただ、この方法は確実性に欠ける(パーツのすりへりやバネのへたりなどによって機能しなくなる)おそれがあり、それをふせぐために安全を見越して強めのバネにすると、トリガープルが重くなってしまいます。個人的にはあまりかしこい方法とは思えません。アレンは、逆転防止のため、独立した逆転防止ラッチを設けました。このため、バレルグループの後面には中心よりから、シリンダーストップ、シリンダーハンド、逆転防止ラッチに対応するギアが同心円状に3重に並ぶことになりました。これで確実な作動は得られますが、どうもこれもあまりスマートな方法に思えません。精度の低いプラキャスト製ガレージキットでは特に問題が生じやすいので、ハンドと逆転防止ラッチのギアは共用とし、2重にしています。実銃とは違うわけですが、機能は全く同じです。
 ウェイトを入れられる場所はほとんどグリップだけのようです。バレルは相当に重くすることもできますが、重くするとシリンダーストップが折れる危険性が高まるのであまり重くはしない予定です。ただ、マズルには深い穴を開け、入れようと思えばウェイトを入れられるようにしようと思います。
 今回、パーカシッョンキャップをセットするニップルと呼ばれる部分にキャップ火薬をセットし、発火できるようにすることも考えましたが、強度上可能なハンマーの力で発火させるのが困難と思われること、安全性に問題が生じそうなことなどの理由でやめました。念のため、バレル内には改造防止のためのスチール材を鋳込むつもりです。

6月10日

 あといくつか小パーツがが追加されると思いますが、型で作るパーツはこんなところです。フレーム、バレルグループ等はまだですが、単純なパーツはそろそろ型取りに入れそうです。

6月16日
 今日試作第一号が完成しました。というわけで、

 
 

 現段階では型で作るパーツを全てプラキャストにしており、とりあえず問題ないようです。空撃ちしてしばらく遊んでみて、それでも問題ないようならこれでいきますし、すりへりが早い部分があればそこは歯科用レジンに変更するつもりです。重量感が出ないかなと思っていましたが、バレルグループに工夫してけっこう重くできました。今回は型取りにあたり、いくつか新しい試みをしてみたので、おいおいアイデアのコーナーでご紹介します。
 今回は、バレルグループ、フレーム、その他のパーツその1、その2という感じで、なんと型が4個で済んでしまいました。要領がつかめるにつれ型の数は減る傾向にありますが、それでも今回は最近の平均の半分くらいです。
 最初からわかりきったことではありますが、トリガーを引くとハンマーが動いてバレルグループが回る、(トリガープル調節を除けば)それ以外にギミックはありません。これは再現性の問題ではなく実銃にこれしか機能がないわけです。製作が短時間で済んだこと、型も少数で済んだこと、ギミックが少ないことなどから、価格は安めに設定するつもりです。「ザ・プロテクター」より1,000円安いくらいの線を考えていますが、まだ未定です。


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