マカロフPM製作記 

これはマカロフPMの製作情況をリアルタイムでお知らせしたものです。なお、他のページと重複する画像は削除しました。

1950年代以後ソ連を始め旧東側の多くの国が軍用制式拳銃として使用したものです。最近ではボディーアーマーの普及、テロの凶悪化などから9mmマカロフ弾の威力不足が問題となり、9mmパラベラムを使用するMP443グラッチがロシアの次期制式拳銃に制定されたそうですが、まだ当分は第一線で使用されつづけると思います。
 製品として以前と同じ機種をモデルアップするのは初めてですが、いうまでもなく旧作よりはるかにいいものにするつもりです。
 ベースは啓平社さんのポケットガンを考えていたのですが、それよりはるかに適したものが見つかったのでそちらにしました。意外かもしれませんがベースは韓国製、アカデミーのPPK/Sにします。コッキングガンを製品化するのは初めてですし、外国製品をベースに使うのも初めてです。
 コッキングガンをガレージキット化する際に最大のネックとなるのは強度です。国産の多くの製品ではパーツを支えるピン等がモナカの左右フレームから直接生えています。ベースよりはるかに大きな銃をモデルアップしてそっくり包んでしまうなら別ですが、ピストンを動かす強力なスプリングの力に耐えるパーツをプラキャストで代替するのは無理っぽいです。ところがアカデミーのPPK/Sはフレーム内のメカがユニット化されているんです。このユニットをそっくりプラキャストのアウターフレームに移してしまえば強度上の問題はほとんど生じないはずです。これはベースとして理想的であるだけでなく、現在の国産低価格コッキングガンが実現していない一体成形のフレームを実現しています(以前は国産でもグンゼ、コクサイなどがあったんですが)。ある意味では国産品を越えているわけです。スライド(これも一体で弾性によって着脱します)の強度は問題ですが、資料(旧作を作ったときには入手していなかった)によるとマカロフのスライドは比較的弱装の弾薬を使う割に幅が大きいようです。アカデミーのスライド両側面を平らにならし、さらに1mm板を貼ってちょうどぐらいでしょう。これならたぶん全体の強度は問題ないと思います。コッキングのための突起の強度はちょっと不安ですが、形状などを工夫して解決するよう努力してみます。価格によりますが、最近他メーカーさんが使っている高価ですが強度のある試作用樹脂をスライドにのみ使うという方法もありかもしれません。高価になりすぎるようならスプリングを弱めるという手もありますし。
 トリガーとハンマーはSAのみ連動します。ホップチャンバーの質がやや国産品に劣るようですが、一応ホップつきです。まあゲームで有利に使えるようなものにはなりえませんが、近すぎて撃つのがためらわれるときに使うくらいはできるのでは。マガジンは上部が細くなっていますが準フルサイズです。旧作はマガジンボトムを切断して平らにならし、そこに延長部を接着するというやや難がある方法をとらざるを得ませんでしたが、アカデミーのものはボトムがネジ止めなのでより適しています。
 かなりの大改造をすればトリガーガードを下げることによって実銃通りの分解ができそうですが、今回はなるべく簡単に、安くあげるコンセプトでいこうと思います。トリガーガード、スライドストップはフレームと一体のモールド、セーフティはスライドと一体のモールドにします。セーフティが必須というのはASGKの自主規約ですし、今回は低パワーということもあり、セーフティはなしにするつもりです。マガジンキャッチはできればライブにしますが、スペース等の関係で無理ならアカデミー製品同様クリックストップするだけにします。グリップは厚み等が違うので側面のみですが実銃型取りの旧パーツを加工して使用します。アカデミー製品はインナーバレルがマズルギリギリまで出ていてライフリングの表現もありませんが、マカロフではややバレルが長いので適度に引っ込み、ライフリングの表現もできます。
 アカデミー製品は定価1,300円、実売1,000円ちょっとぐらいのようで、トリガー、ハンマーなど多くの金属パーツを使っているのに非常に安価です。国産品に比べてまだまだ細部に神経が行き届いていないような印象もありますが、ここまでくれば追いつくまであと一歩かもしれません。国内メーカーもうかうかしていられませんね。外国製品をベースにする際安定して入手できるかが大きな不安材料になります。そこで蔵前の某問屋さんで22挺(そこにあった全て)購入してベースを確保しました。なお、たぶんマガジンを塗装する必要が生じると思いますが、シルバーでも問題ないはずです。
 発売は8月下旬、価格はスライドの材質が通常のプラキャストですんだ場合はキット8,000円、完成品16,000円くらいになると思います。進行情況はここで報告していきます。

7月13日
 今こんな感じです。

製作過程1製作過程2

 マガジンキャッチはライブにしました。しかし、マカロフとPPK/Sとではマガジンの角度がかなり違う(マカロフの方が垂直に近い)のでマガジンキャッチやマガジンの延長部はあまりリアルな形状にはなりません。旧作は刻印、スライド上面の反射防止、グリップ後部の微妙な段差等を省略してしまいましたが、今回は再現するつもりです。現在までのところ特に困難や問題点は出てきていません。アームズの8月末売り号および夏のイベントに間に合わせるよう今月末か来月頭くらいには試作品ができるよう努力しています。

 そもそもアカデミーのPPK/Sを見たことがないという方もいると思うのでちょっとご紹介しておきましょう。

アカデミー1

 どうも外形はマルゼン製品を参考にしたらしく、感じが似ていてやや全体に大きい感じです。トリガー、ハンマー、マガジンボトム等は金属製ですが、何とも安っぽいテラテラのメッキ仕上げで、エッジが全体に立っていません。グリップが茶色なのは意味不明です。グリップの固定ネジはプラスネジです。マガジンキャッチの位置にあるのは実はクロスボルト式のセーフティであり、マガジンはクリックストップしているだけです。ただ、昔の東京マルイ製品のようにプラの弾性に頼ったもの(折れることもありましたね)ではなく、かなり強いスプリングで動くものなのでリアリティはともかく実用上不安はないです。中型オートながら装弾数は19発とかなり多いです。
 おおざっぱな形はまあまあなのですが、細部にリアリティへのこだわりがいまいち感じられないという印象です。ただまあ国産の低価格製品も15年くらい前はこんなものが多かったです。

アカデミー分解1

 スライドは弾性ではまっているだけです。ちょっと乱暴な気もしますが使用感として全く不安はないですし、一体成形のメリットの方が大きいと思います。着脱はコッキング状態で行います。

アカデミー分解2アカデミー分解3

 グリップを外し、バレル部を固定しているネジ、ハンマー下方のピン、セーフティを(反対側から止めているネジを抜いて)抜くとユニットが上方に抜けます。

アカデミー分解4

 基本的に使用するのはこの内部ユニットのみです。コッキングガンをガレージキット化するにあたって一番問題になるスプリングの後部やシリンダー前部の固定の強度がユニットによって保証されているので非常に都合がいいというのがお分かりでしょう。トリガー、ハンマー、マガジンボトムはせっかくの金属パーツですがリアルな形状の樹脂に変更します。こうなると重量が軽くなってしまいますが、ウェイトを入れられそうなのはマガジン延長部くらいのようです。
 なお、アカデミーのPPK/Sには持病があります。トリガーバーがトリガーから出ているピンから外れてしまうというものです。これはピンがもう1mm長ければ解決するもので、設計または製造上の問題です。キットではもちろんこういう問題は起きないようにします。この問題点1つを除けば作動等にまったく問題ない、というより金属パーツ、一体成形のパーツを多用しているだけあって国産の低価格製品よりしっかりしている印象があります。
 ユニットが透明なのでわかると思いますが、マガジン上部は薄くする必要はあるものの、後部を削る必要はありません。また、薄くなっている上部にもかなりの厚みがあります。国産品なら.32ACP仕様という設定にして上部の厚みに統一して残弾確認口などのモールドもつけてリアルにするところでしょう。全体に、「惜しい、もうちょっとなのに」という感じが強くする製品です。簡単な加工でできるという制約はありますが、可能な限り私ならこうする、というコッキングガンに仕上げたいと思っています。

7月20日
 サーフェイサーをかけて仕上げに入る直前の状態です。

仕上げ直前1仕上げ直前2

 現在はすでにサーフェイサーをかけてパテ盛り、細部の修正、仕上げの段階に入っています。

ホルスターに入れる

 わずか3000円で買った実物ホルスターにも問題なく入ります。ただたいていリアルなサイズで作るとそうですが、ちょっときつめなので、やはりホルスターに入れて長期間保管するのは避けた方がよさそうです。
 エジェクションポートを開口したかったのですが、ちょうど強度上一番問題になるシリンダーをひっかけて後退させる突起の位置にきてしまうため断念しました。開口させてリアルな形状にしようとするとここから破断する危険が大きくなるからです。
 今回はきわめてパーツ数が少なくなりそうです。型によって作るパーツはスライド、フレーム、グリップ、アウターバレル、マガジン延長部、マガジンキャッチ、ハンマー、グリップ固定ネジのカラー、ユニット固定ピンのうち1本(太さ3.5mmと半端なので)、トリガーくらいになりそうです。このうちトリガーのみ歯科用レジン、他はプラキャストにする予定です。ハンマーも歯科用レジンにしようかと思ったのですが、シアが金属製とはいえエッジが丸くてツルツルのメッキ仕上げなのでプラキャストでも早くすりへることはないと判断しました。歯科用レジンだと片面の面取りを1個1個加工しなければならず面倒ですし、ハンマーをひっかけて起こすスライドの方が早くすりへるおそれがあります。
 ウェイトを入れる場所が少ないと書きましたが、マガジンを開けて見たら大きなスペースがありました。国産品なら当然ウェイトを入れるところでしょうが、入っていません。ここと、グリップの一部にウェイトを入れれば、金属パーツが減って軽くなった分くらいは取り戻せそうです。
 地方によってはアカデミー製品が入手しにくい方もいらっしゃるかもしれませんが、キット購入希望の方は早めに探しておくことをお勧めします。完成品でも場合によってはベースの銃がなくなって希望に応じられなくなる可能性もあります。その場合ベース持ちこみ加工を行うかもしれません。定価でもわずか1300円のものなので、念のため入手しておいて損はないと思います。まあ、万が一発売中止、キットが組み立て困難なものになるなどの事態になっても責任は負えませんが、今回はそういう可能性は低いと思います。
 気が早いですが、今回の製品が好評なら同じようなコッキングガンをシリーズ化することも考えています。モーゼル1934やCz27のリメイクをはじめ、いろいろ作れそうですね。

7月28日
 昨夜試作第1号が完成しました。

と、いうわけで

 グリップ側面の形状を流用できたこともあり、かなり早く完成できました。スライドはフレームのレールとかみあう内部の板状の突起(左右)が一体で成形されているという変わったもので、型抜きが困難ですが、ちょっと複雑な型で一体成形できました。まあ、九四式のフレームを経験すると、まあほぼどんなものでもたいしたことはないように感じてしまいます。いちばん心配だったスライドの強度も問題ない感じです。作動、発射とも全く問題ありません。
 とは言うもののまだいくつか問題が残っています。まず、しばらく空撃ちしていたら、アウターバレルがぽっきり折れてしまいました。ここはあまり力がかかるところではないと思っていたので意外でした。これは内部に10mm真鍮パイプを鋳込めば解決するはずです。次にハンマーですが、やはりプラキャストでは強度が不足のようです。機能もないのにハンマースプリングがかなり強いせいです。まあ、ハンマースプリングが弱すぎると使用感上頼りない感じがするのも事実ですが。1個1個弱いキックバネを巻くのは面倒なので、ハンマーは歯科用レジンに変更します。
 初めてのスライドが引けるマカロフ、自分ではなかなか気に入っています。予定よりやや早く、8月中旬には発売できそうです。予価はキット8,000円、完成品15,000円ということにしておきます。

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