PSS特殊消音ピストル製作記

これはPSSの製作情況をリアルタイムでお知らせしたものです。なお、他のページと重複する画像は削除しました。

 PSSピストルは旧ソ連で開発された秘密兵器であり、最近では輸出もされています。発射ガスをカートリッジ内に閉じ込める形式の特殊消音ピストルで、通常のサウンドサプレッサーのような減音ではなくほとんど無音で弾丸が発射されます。かさばるサイレンサーが不要、しかも通常のセミオートピストルでは高い減音効果を得るためにスライドをロックして手動連発にする必要があるのに対し、セミオートで連射できます。初速は遅いものの、重いスチール製の弾頭はボディーアーマーに対しても高い貫通力を持っています。夢のようなアンダーグラウンドウェポンですが、まだその正体は謎に包まれています。
 ドイツの銃器雑誌「DWJ」(ドイッチェン・バッフェン・ジャーナル)2003年6月号にレポートが掲載されていたので、これを主な資料としてモデルアップすることにしました。モデルガン形式にするつもりですが、従来とは違うギミックを検討中です。製作状況はここでお伝えしていきます。

9月6日

PSS製作途中1

 今こんな状態です。まだまだのようですが、実はもう基本メカはほぼ完成しています。

PSS製作途中2

 わかるでしょうか。いつもの白熱灯だと動きが早すぎて写らなかったのでフラッシュ撮影にしたため止まってしまっていますが、PSSのギミックはトリガーを引くとスライドが後退して排莢し、その後スライドが前進するというものです。発射機能はありませんし、ガスも火薬も使いません。スライドは実銃と同じ位置(構造は異なります)にあるごく弱いリコイルスプリングで常に前方に押されています。そして、バレル内には強いスプリングが入っています。チャンバーにカートを入れてスライドを前方に押すとバレル内のスプリングは圧縮され、完全に前進するとスライドはシア状のパーツによって固定されます。トリガーを引くとシア状のパーツが動いてスライドはフリーになり、バレル内の強いスプリングのテンションで勢いよく後退します。バレル内のスプリングが伸びきった後、スライドは慣性でさらに後退し、カートを排出します。カートがなくなってしまうと、バレル内のスプリングは圧縮されることはなく、スライドは弱いスプリングのテンションで前進します。もちろん連発はできません。
 詳しくは知らないのですが、たぶん「ミカドロイド」でビッグショットさんが使った十四年式はこれと大筋同じシステムではあるまいかなあと想像しています。私も「ホワイトアウト」でスプリングの力でボルトが後退して排莢し、別のスプリングの力で前進するAK47を作ったことがあり、これはステージガン系のメカということになります。こういう製品としては異例のメカにしてみようと思ったのは、PSSの特殊な性格からです。PSSは薬莢内に発射ガスを閉じ込めるシステムのため、発射音がほとんどなく、、発射炎、煙はまったく出ません。このシステムにすれば、単発のみではありますが、外観上実銃と極めて似た作動状態が再現できると思ったわけです。電気発火システムなどは必要なく、そのままステージガンに使うこともできるはずです。まあ、劇中で詳しく説明しないと普通の人には何のことか全然わからないのでメジャー作品向きではないと思いますが、ガンマニアの自主制作映画とかには面白い使い方ができるかもしれません。
 一般の方にとってもこのギミックはおもちゃとしてなかなか面白いのではないかと思います。実は私も製作中何度も排莢させて遊び、なかなか作業が進まないくらいです(笑)。
 カートはマグナムリボルバー並みの大きさがある実物大で、けっこう勢いよく飛びます。メカが固まってからは数十回の作動で1回も排莢不良はありません(当たり前ですが送弾不良ということはないわけです)。
 構造、分解方法等は実銃とまったく異なりますし、マガジン着脱をのぞき、これ以外のギミックはほとんど組めないと思います。システム上スライドをごく弱いスプリングで前進させなくてはならないため、ハンマーの抵抗を与えるわけにはいかず、ハンマーもダミーとなります。ただ、できれば軸穴にOリングの抵抗をかけ、ダウン、コック状態に指で動かせばそこで止まっているような可動ハンマーにはしたいと思っています。
 いままでとまったく違う傾向のものなのでみなさんに受け入れていただけるか不安ですが、がんばって製作を進めます。構造的にはきわめてシンプルですし、ベースの銃も使わないので価格は高くはならないと思います。九四式、HK4あたりと同じか、できればもう少し安くしたいと思っています。

9月13日

PSS製作途中3

 スライド、フレームのおおざっぱな造形を終え、これからマガジン、グリップまわりの造形に入るところです。残念ですが、ハンマーを可動にするためには複雑な構造や面倒な後加工が必要なことがわかり、コック状態で固定としました。エキストラクター、エジェクターはライブです。スライドを押し込む操作がリアルでなくいやだという人は手動エジェクトに変更することも容易です。
 マガジンはフレームの肉厚、強度を確保する必要上ひとまわり小さくなり、エジェクトに使用するリアルサイズのカートは入らないサイズになりますが、形状はなるべくリアルに再現するつもりです。長い弾薬を使用するためグリップは前後に長くなり、かなり握りにくくなると思いますが、これは実銃も同じのはずです。
 このギミックを組むためには、スライドを後退させるスプリングの有効ストロークを確保するため、カートリッジが一定以上長い方が有利です。しかも、負担を軽くするため作動部はなるべく小さく、ストロークはなるべく短い方が都合がいいです。実銃の場合、長いカートリッジを使う銃はデザートイーグル等のように作動部が大きくてストロークが長く、作動部が小さくてストロークが短い銃はたいていカートリッジも短い傾向があります。PSSは発射音、発射炎、煙がないという都合だけでなく、カートが長くて作動部が比較的小さく、ストロークも短いという点でもこのギミックを組むのに向いています。逆に他のほとんどの銃はあまり向いていないわけで、今回の製品が仮に好評でも、このギミックはたぶんこれ1作限りになると思います。
 これまで手動エジェクトも再現してこなかったのは、基本的に実物ダミーを使ってきたからです。実物カートのリムの段差は非常に小さく、1mm以下しかありません。これをエキストラクターで確実に、しっかりと噛むにはかなりの精度が要求されます。量産品のモデルガンでも、オリジナルのカートはリムの段差が大きくなっていますよね。樹脂のカート、エキストラクターを使用する製品としては昔のカート式エアガンがありますが、あの段差はさらに大きくなっていました。それ以下の精度、剛性しかどうしても出ないプラキャスト製ガレージキットで、実物ダミーをエジェクトするのはきわめて困難です。今回はそもそも実物ダミーなどない特殊な弾薬でもあり、リムの段差を1.5mmくらいまで大きくしたことによってエジェクトが可能になったわけです。今後オートをモデルガン形式で再現する場合、実物ダミーを使ってエジェクト不能にするか、リムの段差を大きくしたリアルさを欠くプラキャスト製カートを使ってエジェクトを可能にするかは検討すべき課題になると思います。場合によっては両方使えるものもできるかもしれないですが。

9月21日

PSS製作途中4

 おおよその形ができ、表面仕上げ段階に入ったところです。ごらんのように、サイズはやや小さめながら、マガジンはフル装弾したような外観にしてみました。表面仕上げや型抜きのときちょっと面倒ですし、圧縮されたスプリングの表現などはおもちゃっぽいかなとも思いましたが、まあ一応新しい試みということで。
 グリップは実物大に拡大した側面写真から想像するより握りにくく、感じとしてはグリズリーやオートマグVに近いです。ハイキャパガバのように横に太いグリップはそうでもないんですが、前後に長いグリップはやはりあまりフィーリングがよくないですね。
 たぶんもう100回以上排莢させていますが、原則として1回もジャムはありません。「原則として」というのは、これまでエキストラクターのツメが1回、カートのリムが2回破損しており、そのときは当然ジャムしています。

 単純化すると、リムとツメはこんな状態であり、固い材質で作ってタイトに作り、矢印方向の力をかければ本来壊れるに決まっているわけです。実際にはある程度のクリアランスがあり、またかみ合いが非常に浅いため問題が生じないわけですが、精度や剛性が低いプラキャスト製ガレージキットでは、余裕を見てかみ合いを深くしたいわけで、こうするとパーツにかかるストレスが大きくなってしまいます。当初はかみ合いの深さを1.5mmくらいにしたのですが、これでは深すぎたようで、現在は1mm程度にしてあります。こうして以後は破損していません。プラキャストはある程度の柔軟性があるので製品もたぶん大丈夫だと思います。折れやすいようならグラスファイバーを鋳込んで強化する方法もありますし。
 たぶん原型の完成は10月上旬、中旬に試作第一号完成、下旬に発売くらいのペースになると思います。

9月27日

PSS製作途中5

 現在仕上げ作業中です。ほとんどできているように見えるかもしれませんが、まだたぶんあと1週間くらいはかかりそうです。比較的単純な形の銃なので簡単かと思ったんですが、もちろん9mm機関けん銃ほどではないものの、きれいに仕上げにくい「鈍角のエッジ」が多く、ちょっとやっかいな仕上げ作業になっています。

10月4日

PSS原型

 現在型取りの作業中です。型で作るパーツはこれだけです。グリップのみ黒いのはシボの表現のためアサヒペンのストーン調スプレーを吹いたためで、これではややザラザラの調子が強すぎるので、この上からサーフェイサー(溶きパテ)を吹きました。
 PSSのスライドの滑り止めはちょっと変わっています。まあ大多数のオートはこんなんですよね。

セレーション1

 これはスライドの断面で、赤い部分がセレーションです。こんなのならまあ表現は簡単です。

セレーション2

 極端に誇張するとこんな形のもありますね。これは回転する切削工具の刃で側面から削る都合でしょう。やったことないのにこんなこと言うのも何ですが、これはそんなに難しくないと思います。

セレーション3

 ところがPSSのはこんな形なんです。矢印部分にきわめて仕上げにくい非常に大きな角度の鈍角のエッジができます。これが直線として続いているならまだしも、1本1本のセレーションによって分断されています。まあ何とかなるだろうと思ってこういう形に作ったんですが、何ともなりませんでした(笑)。何度やり直しても見るに耐えない仕上げにしかならなかったので、これはあきらめ、こんな形に変更しました。

セレーション4

 まあこれは頑住吉の技量上の限界ということでお許しいただきたいと思います。また、予想通りマガジン内のカートリッジの表現の部分も難しく、あまりきれいに仕上げられませんでしたが、まあ穴の中がフラットよりは雰囲気が出ていると思います。
 スライドの型はかなり複雑にならざるを得ず、時間がかかりそうですが、特に大きな問題が生じなければ10日までには試作第一号が完成すると思います。

10月10日
 

 今日試作第一号が完成しました。というわけで、

 型にはほとんど問題がありませんでした。ただ、グリップの気泡、パーティングラインを処理したりすると、さらにアサヒペンのストーン調スプレーを軽く吹いて調子を統一する必要があるので、キットの組み立てにはこのスプレーの購入が必要になってしまいそうです。
 まだ1挺組んだだけですが、組み立てに難しい部分はなさそうです。何度も作動させましたが、排莢不良はまったくありません。ただ、原型での作動時には排出のスピードや方向が一定だったのに、複製品ではかなりばらつきが出ています。原因を調べてみますが、これはプラキャストでの複製である以上やむを得ないかも知れません。


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