1.9 単発銃用の閉鎖機構 (頑住吉注:Verschlusse fur Einzellader・2つの「u」はウムラウト・「Einzellader」は英語に直訳すればシングルローダー)

 セルフパッキング機能のある金属弾薬の発生によって気密の問題が解決されたとき、多数の単発銃用閉鎖機構構造が誕生した。これらは3つのグループに分類できる。

1.「ちょうつがい」または「跳ね蓋」閉鎖機構
2.ブロック閉鎖機構
3.シリンダー閉鎖機構

 まず最初に跳ね蓋閉鎖機構が広く普及した。前装銃を簡単に後から跳ね蓋閉鎖機構装備にすることができたからである。跳ね蓋閉鎖機構の場合、チャンバーの後方に弾薬よりいくらか長いフライス削り加工がある。この削り加工内に跳ね蓋がフィットされている。跳ね蓋はバレルと平行に横たえられた軸を中心に方向転換でき、その中にはファイアリングピンがある。ロードのためには跳ね蓋を削り加工から方向転換する。この結果チャンバーにアクセスできる。ロード後跳ね蓋をセットする。その前面はこのとき弾薬底部を支持する。発火はハンマーによって加速されたファイアリングピンによって行われる。

 非常に単純な跳ね蓋閉鎖機構の方式はしばしば小型ピストル(Flobertまたはサロンピストル)に使われた。こうしたピストル(図1-19を見よ)は弱い装薬用のみに作られた。フレームとバレル(1)はしばしば一体で作られている。チャンバーは後方が跳ね蓋(2)によって閉鎖されている。この跳ね蓋にはリアサイトの切込みが備えられていることもある。使用者は後方に方向転換できるエキストラクター(3)の助けによって薬莢をチャンバーから取り除く。ハンマー(4)は発射時に跳ね蓋をいくらか支える。Flobertピストルの他の型の場合は跳ね蓋すらも放棄している。こうしたモデルではハンマーが前方に非常に長く広げられ、この結果薬莢底部全体を覆い隠し、閉鎖機構として役立つことができた。b)は跳ね蓋を開いた際のチャンバーとエキストラクターを後方から示している。

図1-19a) 単純な跳ね蓋閉鎖機構を持つFlobertピストルの断面図。 バレル(1)とフレームは一体でできている。(2)は跳ね蓋、(3)はエキストラクター、(4)はハンマー、(5)はトリガー。 b)は跳ね蓋を開いた際のチャンバーを示している。(頑住吉注:考え得る限り最も単純なものに近いメタリックカートリッジ式単発ピストルです。ハンマーダウン状態ではハンマーノーズが跳ね蓋の穴に入ってロックされていますが、コックすると跳ね蓋をマイナスネジを軸に後方から見て反時計方向に回転してチャンバーを解放することができます。それぞれ板バネでテンションがかけられたハンマーとトリガーの関係はコルトSAAやレミントンダブルデリンジャー等と同じで説明不要でしょう。エキストラクターもマイナスネジを軸に側面図で時計方向、後方からの図ではネジから上が手前に倒れるような形で回転し、空薬莢を排出するわけです。ちなみに、この前の段落で語られている「前装銃を簡単に後から跳ね蓋閉鎖機構装備に」した銃というのは、パーカッション前装銃のチャンバー部分を取り去ってここにブロック状ブリーチを取り付け、このブリーチをこの簡単なハンドガンのようにバレルと平行の軸を中心にスイングさせるものです。ブロック状ブリーチ内にはファイアリングピンが入っており、本来パーカッションキャップを叩くサイドハンマーがファイアリングピンの後端を叩き、先端がカートリッジ後部のプライマーを打つわけですからファイアリングピンは傾斜することになり、やや無理がありました。また当然銃身長もパーカッション時代よりやや短くなることになります)

 多くの跳ね蓋閉鎖機構は「適応構造」原理内のものである。すなわちすでに存在する構造グループ(発火機構のような)が引き継がれている。そういうわけで、これらは特別に金属弾薬用に作られた閉鎖機構よりも劣っており、急速にブロックおよびシリンダー閉鎖機構によって取って代わられた。

 我々はブロック閉鎖機構の場合、レミントン閉鎖機構(ローリングブロック)、フォーリングブロック閉鎖機構、回転軸ブロック閉鎖機構とに区別する。レミントン閉鎖機構はFlobertの提案に起源が求められるが、1863年にLeonard Geigerによってアメリカでパテントが取得された。レミントンはこのパテントを知り、Geigerと契約した。この閉鎖機構は多数のライフルおよびピストルに使われた。図1-20は単純化した断面図を示している。チャンバーは後方が回転ブロック(3)で閉鎖されている。ハンマー(4)がコックされている際は回転ブロックはいっぱいに後方まで方向転換できる。この結果チャンバーは完全に開放される。ロード後、使用者は回転ブロックをパチンと高い位置に戻す。この位置では回転ブロックはスプリングのテンションがかけられたレバー(6)で保持される。ハンマーはトリガー(5)を引くことによってレットオフし、前方に動く。その際回転ブロックはハンマー前方の円筒面によってその位置に固定される。これはハンマーがファイアリングピンにあたり、弾薬に点火するより前に起こる。リコイルショックは回転ブロック回転軸とハンマー回転軸から銃に伝達される。このレミントン閉鎖機構を持つ最初のピストルはモデル1865ネービーである。この銃は.50口径のリムファイア弾薬を発射した。1869年にはすでにレミントンはこの閉鎖機構を持つ.22口径のターゲットピストルを生産した。このモデルはいろいろな変更を経験し、モデル1901ターゲットとして1909年まで製造された。これは1888年に製造中止になった軍の実用目的のピストルより決定的に長かった。

図1-20 レミントン閉鎖機構(ローリングブロック、回転ブロック閉鎖機構)。(1)バレル、(2)フレーム、(3)回転ブロック、(4)ハンマー、(5)トリガー、(6)レストレバー(頑住吉注:図のハンマーダウン状態では(3)の回転ブロックはハンマーに支えられてオープンすることができませんが、ハンマーをコックすると時計方向に回転してオープンできるわけです。機構上回転ブロックとハンマーの軸に強い負荷がかかるのでこのように非常に太くなっています。この機構にはシンプルで、強力な弾薬が使え、操作も比較的速いといった長所があり、一時期かなり普及しましたが、より優れたシステムであるボルトアクションの登場後廃れてしまいました。ちなみにハンマーが抵抗なくダウンできるためには回転ブロックとの間に少々のクリアランスが必要であり、これは閉鎖後も回転ブロックの遊びとして残ってしまいます。当時は問題なかったようですが、現代のレプリカで.357マグナムのような高圧の弾薬を撃つとこのわずかな遊びによって薬莢切れが起こることもあるので製造をかなり厳密にしないと問題が起こるらしいというのは「Uberti製レミントンローリングブロックピストルレプリカ」の項目で触れた通りです。)

 最初の成功したフォーリングブロック閉鎖機構の発明者はアメリカ人Christian Sharpsである。彼は1848年に、有名なシャープスライフルに使われた垂直ブロック閉鎖機構のパテントを取得することができた。垂直ブロック閉鎖機構では、閉鎖ブロックがレバーの動きによってバレルに対して垂直にフレーム内の削り加工内を押し動かされた(図1-21cを見よ)。

図1-21c 垂直ブロック閉鎖機構。(頑住吉注:ほとんどなじみのないシステムですが単純なので理解はしやすいはずです。強いて言えばリバレーターのシステムが近いと言えるでしょう)

 最も成功したブロック閉鎖機構はフォーリングブロック閉鎖機構である。この機構は過半数のフリーピストルに使われている。フォーリングブロック閉鎖機構では、閉鎖部品はバレル軸線と垂直に横たえられた水平の回転軸を中心にして回転可能にフレーム内に収納されている(図1-21a)を見よ)。

図1-21a Peabodyフォーリングブロック閉鎖機構。

 後方に横たえられた回転軸を持つこのフォーリングブロック閉鎖機構(図1-21a))は、アメリカ人H.O.Peabodyによって設計され、1862年にアメリカでパテントが取得された。本来のPeabody閉鎖機構は外装ハンマーを持っていた。スイス人ライフル工F.v.Martiniは1867年にこの閉鎖機構を改良した。彼はハンマーを閉鎖メカニズム内に移し、ハンマーのNussを「引き棒」を通じて外装された閉鎖機構レバーと結合した。この結果閉鎖機構のオープンの際ハンマーがコックされた。このシステムは多くのターゲットピストル、特に1971年に製造が中止されたヘンメリーモデル100〜107でも使われた。後にMartiniはハンマーをストライカーと交換した。この閉鎖機構はこの形で1871年以後Martini-Henryライフルの中でイギリス陸軍に使用された。ちなみにこのライフルバレルのライフリング形状はスコットランド人ライフル工Alexander Henryに由来している。

 今日我々はストライカーを持つPeabody-Martini系閉鎖機構を、ロシア製TOZ−35およびヘンメリーモデル150のような有名なターゲットピストル群に見出す。

 1869年にバイエルンで採用されたWerder(頑住吉注:辞書には「中州」、「低湿地」、「干拓地」などの意味が載っていますが、この場合人名かもしれません)ライフルおよびピストルもフォーリングブロック閉鎖機構を持っていた。これらは上に位置した閉鎖およびコッキングレバーによって目立っていた(頑住吉注:当時バイエルンは独立した王国であり、このシステムを持つ軍用銃が採用され、その銃は珍しいことに普通下にある操作レバーが上にあったということだと思います)。

 前に横たえられた回転軸を持つフォーリングブロック閉鎖機構(図1-21bを見よ)は1884年にSuhl(頑住吉注:ドイツの都市)のC.W.Aydtによって設計された。この閉鎖機構はかつてしばしばターゲットピストルに使われた。今日ではSuhlのBuhag(頑住吉注:「u」はウムラウト、これもSuhl内の地名でしょう)のモデルZentrum(2)の中のみである(頑住吉注:いまいち分かりませんが、この形式はかつて多用されたことがあるが現在では廃れているということでいいでしょう)。

図1-21b Aydtフォーリングブロック閉鎖機構。

 回転軸ブロック閉鎖機構はオーストリアのWerndlに由来する。オーストリアライフルモデル1867としてWerndlライフルが使用された。回転軸ブロック閉鎖機構ではチャンバーが、バレルに平行で下にずらされた軸を中心に回転可能なブロックによってロックされる。一部では閉鎖機構の回転はブロックの切り欠きをバレル末端の後ろに持ってくる。この結果ロードすることができる。その後ブロックを回転して元に戻すとチャンバーは閉鎖される。ハンマーはブロック閉鎖機構内部の「あやつるカーブ」によってオープン時にコックされる。1955年にはハンガリーでWerndl閉鎖機構を持ったフリーピストルが作られた。(頑住吉注:何故かこのシステムには図等が一切なく、どういうものかよく分かりません。この説明だと「跳ね蓋閉鎖機構」と大差ないシステムのように思えるのですが)

 シリンダーまたはボルト閉鎖機構はニコラウス フォン ドライゼに起源が求められる。この閉鎖機構は前世紀の20年代に彼の点火針小銃用に開発された(頑住吉注:この本は1983年発行ですから1820年代のことです)。金属弾薬の発生によって気密の問題が解決され、シリンダー閉鎖機構の長所(大きな機械的安全性、高いガス圧の弾薬使用時でも薬莢の引き出しに問題がない)が認められた。ピストルにおいては今も昔もシリンダー閉鎖機構は稀にしか使われていない。我々はまず第一にはそれをフリーピストルの中に、そしてメタルシルエット射撃用ピストルに見出す。


 単発銃用の閉鎖システムが語られているわけですが、人間いろんなことを考えるなーと感心します。特にローリングブロックシステムは、全然売れなかった(笑)レミントンM1867ネービーのとき資料を調べてよくこんな方法を考えついたものだと思いました。

 ここで説明されているシステムは全てバレル、フレーム、ストックが強固に一体化でき、遊底だけが解放、閉鎖のため動くものです。しかし我々はむしろ単発銃といえば中折れ式の方になじみがあり、銃器の発達史という観点からそれに全く触れられていないのはどういう理由なのかちょっと疑問に思いました。






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