2.11.9 ディスコネクター
(頑住吉注:「Unterbrecher」。通常「ブレーカー」、「遮断器」を意味する語です)

 ノーマルなセルフローディングピストルの作動方式の論評の際、ディスコネクターの機能も論じられた。その任務は1発の発射後、トリガーとコック部品の結合を遮断し、そしてそれによりコック部品に、後退した閉鎖機構によってコックされたハンマーをそのコックレスト内に保持する可能性を与えることにある。リコイルショックによって動く銃の全ての部品はディスコネクターのコントロールに使うことができる。閉鎖機構が再び前方に走り、新たな弾薬がマガジンからチャンバーに運ばれた後、トリガーとコック部品の間の結合の遮断は解除されねばならない。これにより打撃部品はトリガーへの圧力により改めて作動可能となる。

 全てのセルフローディングピストルのうち大多数では、トリガーとコック部品の間の結合は、トリガーと関節結合されたトリガーバーによって引き起こされる。閉鎖機構に設けられた「あやつるカーブ」(後退時特別なディスコネクターまたはトリガーバーに取り付けられたカムを介してトリガーバーのコック備品に向けられたフリーな端部を押し下げる)が、バーとコック部品のかみ合いを解除する(頑住吉注:ベレッタピストルなどで使われているお馴染みの方法で、図はありません。たいていはスライドが直接トリガーバーを押し下げますが、独立したディスコネクターを持つものもあります http://www.mek-schuetzen.de/Blueprints/Beretta_70_Auto.png )。

 コック時のハンマーの動きも同様にディスコネクトに使用できる。図2.11.33ではそのようなシステムが表現されている。(a)では銃はコックされている。矢印はいろいろなスプリングの作用方向を表現している。トリガーバー(2)は1本の軸でトリガーに固定されている。トリガーの下部も同様に1本の軸で回転可能にフレームに収納されている。コック部品(3)はハンマー後方にある。1発の発射の後、閉鎖機構は後方に走り、ハンマーをコックする。ハンマーはこの際、ハンマーに加工されたディスコネクトカム(4)がトリガーバーを押し下げる程度まで大きく回転させられる。これによりコック部品は解放され、閉鎖機構が前方に走った時ハンマーをコックされた位置に保持できる。このシステムの欠点はコック部品の解放が遅いことにある。リコイルショックが小さすぎた時、状況によってはディスコネクトが起こらず、ハンマーは閉鎖機構が前に走った時再びデコックされる。このような時、閉鎖機構が前に走る速度が小さい場合はダブル発射は起こらない(頑住吉注:つまり速い場合は起こるということです)。このような現象は時々、弱いロードがなされた弾薬が使われた場合の.22クルツ仕様のワルサーオリンピアラピッドファイアピストルに見られる。これに対しよりリコイルショックが大きい場合(例えばS&WピストルM39、9mmパラベラムの場合)完全な信頼性をもってディスコネクトが行われる(頑住吉注:M39には独立したディスコネクターがあり、こんな構造ではないはずです。何と間違えたんでしょうか http://www.mek-schuetzen.de/Blueprints/s_w_39.gif )。

 

図2.11.33 ディスコネクターとしてのハンマー

 1909年にマーケットに出現した6.35mmブローニング弾薬仕様のステアーピストルはハンマーバーの動きをディスコネクターのコントロールに使った(頑住吉注: http://www.littlegun.be/ma_collection/a%20be%20steyr%20pieper%206.35%20fr.htm )。パラベラムピストル(頑住吉注:ルガー http://www.mek-schuetzen.de/Blueprints/luger_08_alt.gif )の場合、トリガー角度レバー(4)とコック部品(5)の間の結合解除は、バレルエクステンション(1)の後退によってもたらされる(図2.11.34のaおよびbを見よ)。コック部品(5)はバレルエクステンションに回転可能に収納されている。トリガー(8)にかけられた圧力は、トリガー角度レバー(4)およびスプリングのテンションをかけて収納されているピン(6)を介してコック部品に伝達される。この圧力はファイアリングピン(3)を解放し、弾薬に点火するのに充分なほど大きい。リコイルショックによってバレルとバレルエクステンションはいっぱいに後方に押し動かされるので、トリガー角度レバー(4)とピン(6)は(b)で表現されているようにもはや触れない。バレル、バレルエクステンション、閉鎖機構が出発位置に戻った後、ファイアリングピンは再びコックされており、銃は装填されている。コック部品内でスライド可能に収納されているピン(6)は、その復帰時に、まだ後方に引かれた位置で保持されているトリガー角度レバーに当たり、それによってコック部品内に押し込まれる(c)。トリガーが射手によって解放されると、トリガー角度レバー(4)は出発位置(a)に戻る。小さなスプリングがピン(6)を押し動かしてコック部品から一部突き出させ、そしてピストルは再び発射準備状態となる。







図2.11.34 パラベラムピストルのディスコネクター

 ブローニングは彼の最後の設計であるFNのハイパワーピストルで他の方法を使った。図2.11.35はこの銃の単純化した部分断面図を示している。トリガーにはトリガーバー(プッシャー)(1)が関節結合され、このトリガーバーは両腕の長さがほぼ同じレバー(2)に作用する。このレバーは閉鎖機構内に1本の回転軸を使って回転可能に収納されており、右にノーズを持つ。このノーズはトリガーを引いた際圧力をコック部品(3)に伝達する。閉鎖機構が後方に走ると、トリガーバーとレバー、レバーとコック部品の結合はすぐに断たれ、コック部品はハンマーをコックされた位置に保持することができる。閉鎖機構の復帰時、レバーの左端はトリガーバーに当たり、図示されていないトリガーバースプリングに逆らっていくらか左へと回転させる(トリガーバーとレバーはバレルのフィーディングランプの脇に位置する)。トリガーが解放されるとトリガーバーは図に示されるように再び出発位置に戻り、銃は発射準備状態となる。



図2.11.35 FNハイパワーピストルのディスコネクター


 図2.11.33で示されたハンマーによるディスコネクトは、主に私があまり興味のない競技銃で使われる方法のようで、実銃にも例があるとは知りませんでした。かの小林氏の設計による大昔のMGCモデルガンの一部(コルト32、ウッズマン)などはこれに近い方式で、昔アームズに「実銃では使用できないユニークな方法」などという間違ったことを書いてしまった覚えがあります。.22ショート程度なら問題ないでしょうが、強力な弾薬を使う場合不完全閉鎖でもハンマーが落ちるシステムには問題があるはずです。まあこのシステムとは別に不完全閉鎖ではトリガーが引けなくなるようなシステムを設ける手もありますが。

 ルガーの方法はきわめて巧妙なものですが、精度が要求され、製造にも手間がかかり、異物の侵入に弱いのが分かります。

 ハイパワーの方法はきわめて単純でしかも確実な、好感の持てるものです。これも以前アームズで方法を紹介しましたが、非常に簡単にフル・セミ化できるという副次的な長所(?)もあります(簡単に言うとフル時にはトリガーバーが前に押し倒されないようにし、前進してきたレバー先端がトリガーバー上端の傾斜に乗り上げ、レットオフする、というものです)。しかしこれも何度か触れたことですが、力の伝達がトリガー→トリガーバー→レバー→シア→ハンマーと通常より迂遠になっており、これが迂遠な感じのする不評なトリガーフィーリングの原因ではないかと思われます。

 直接関係ありませんがハイパワーのセミ・フル化との関連で、九四式を作っていて思いついたアイデアを紹介します。



 押すと暴発するというトリガーバー先端の赤い部分に小突起を設けます。スライドには下向きのプレートを取り付けます。これだけでスライドが前進しきった瞬間にハンマーが倒れるフルオートマシンピストルになります。プレートを上下にスライドできるようにすれば簡単にフル・セミオートになります。もっと暴発しやすくなりますけど、まあ少し幅広くなるのを我慢してフレーム下方からガードプレートを伸ばすという手もあります。たぶんこれ以上簡単にフル・セミ化できるハンドガンは存在しないのではないでしょうか。これを利用しないのはもったいないです。ロングバレル、ドラムマガジン、ショルダーストックを装備した九四式改機関短銃を装備した日本軍特殊部隊がジャングル戦で大活躍、なんていう架空戦記は‥‥ダメですね。やっぱり。












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