2.9 フレーム、閉鎖機構、およびバレルの結合(分解システム)

 全ての銃はできるだけ工具なしでクリーニングのために分解できなくてはならない。この分解はバレルおよびチャンバー、閉鎖機構(包底面)およびマガジン収納穴に簡単にアクセス可能にするものであるべきである。というのは、火薬およびプライマーの燃焼時の残りかす、場合によっては弾丸の油分やこそぎ落とされた弾丸の鉛を時々取り除かなくてはならないからである。これによってピストルの作動性は維持される。全てのモダンな銃において取り外せるマガジンは別として、このためセルフローディングピストルはグリップ(フレーム)、閉鎖機構、バレルという構造グループか、あるいは閉鎖機構、バレルを含むフレームという構造グループに分解できる。後者はバレルが恒久的にフレームと結合されている全ての銃にあてはまる。いずれのケースでも閉鎖機構のための構造は、発射による衝撃様の負荷に耐える2つのストッパーを持たねばならない。前のストッパーはチャンバーの閉鎖機構サイドの端部によって形成される。分解時にバレルを取り出すタイプなら、閉鎖時のショックはバレルを保持している部品によって吸収されなければならない。バレルがフレームにねじ込まれ、あるいは他の方法で固定されているなら、閉鎖時のショックは直接フレームに伝達されることになる。後方に走る閉鎖機構がもたらすショックは閉鎖のショックよりも大きい。多くの構造ではそれは直接フレームに伝達される。

2.9.1 バレルとフレームが固定して結合されている場合のシステム

2.9.1.1 閉鎖機構ルートの制限による結合

 このシステムはしばしばポケットピストルにおいて使われる。図2.9.1はワルサーPPにおいて使われている型を示している。トリガーガード(4)はフレーム(1)に回転可能に収納され、強力なスプリングによってそのノーマル位置に保持されている(a)。トリガーガード上部はブロックで終わっており、このブロックは右サイドがフレームにあてがわれている。スライド(3)が発射時に後退すると(ルート長a)、ブロックがスライドのルートを制限する。閉鎖機構は前部はバレル(2)によって、後部はフレームにある2本のノッチによって誘導される。このノッチの中にスライド側壁にフライス加工された、bの長さの2本の突起部(5)がかみ合っている。bはaよりも大きい。このためフルに後退した際もノッチ(フレーム)と突起(スライド)の結合は解けない。閉鎖機構の取り去りのためにはこの場合単純にトリガーガードを下方に引く。この結果ブロックはスライドのさらなる後方への引きのためのルートを開放し、このためノッチと突起の結合は解除される。これで操作者はスライド後部を持ち上げ(b)、バレルから前方に抜くことができる。
 閉鎖機構ルートの制限のためのブロックは必ずしも例えば他のワルサーモデル群やマカロフピストルのようにトリガーガードの一部ではなく、時としてスライドする部品の形状を取る(例えばザウエル&ゾーンのピストーレM38のように)。



図2.9.1 ルート遮断による閉鎖機構ルートの制限(ワルサーモデルPP)


 今回からさまざまなオートピストルの分解方法に関する内容が始まりました。

 最初の方法は皆さんも良くご存知の、ワルサーPPシリーズに代表される方法です。PPシリーズが超メジャーなのでこれが元祖のように思われかねませんが、実際にはシングルアクションのワルサーモデル8ですでに使われています。

http://www.mek-schuetzen.de/Blueprints/Walther_Modell_8_ex.jpg

 ちなみにモデル2〜7も分類上は「閉鎖機構ルートの制限による結合」に含まれると思われる方法であり、

http://www.mek-schuetzen.de/Blueprints/Walther_Modell_6_ex.jpg

 この図で部品1のスライドエクステンションというスライド先端にバヨネット結合された部品をひねって抜き取るとルートが長くなってスライド後部が持ち上げられるというものでした。モデル8はこれらの旧シリーズから大きく設計変更された銃で、PPシリーズへの橋渡し役を務めた銃であると評価できそうです。

http://www.mek-schuetzen.de/Blueprints/sauer_sohn_38.gif

 これは文中に登場するザウエル&ゾーンM1938です。この図にはパーツ名がありませんが28がテイクダウンラッチで、垂直に下に押し下げるとルートが長くなります。部品数は多くなりますが、床井雅美氏はこの方が「破損、変形による欠点がない」と評価されています。H&K VP70の方法はこれとほとんど同一ですし、

http://www.mek-schuetzen.de/Blueprints/HK_VP70Z_EX.gif

 SIGザウエルP230ではスライドする部品ではなく回転する部品ですがやはり似た形式になっています。

http://www.mek-schuetzen.de/Blueprints/sig-sauer_230.gif

 これらの方式はバレルが固定されたオートピストルにおいては主流と言えるもので、当然比較的低威力のストレートブローバックの銃に多く見られますが、ステアーGB(ワルサーモデル2〜7に似た形式)など強力なディレードブローバックの銃にも一部見られます。









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