2.11 トリガーシステム

2.11.1 よいトリガーとは何か?

 明瞭なサイトおよび適したグリップとならんで、適したトリガーキャラクターは射手がその銃を使ってどれくらいよい射撃ができるかに決定的に重要な意味を持つ。このトリガーキャラクターはトリガーが引かれた際に残す力・ルート・カーブによって表現される。それではどのようなトリガーキャラクターがよい射撃に必要とされるのか? 図2.11.1はよいトリガーがどんな力・ルート・カーブを描くべきかを示している。垂直方向ではトリガーに作用する力、水平方向ではトリガーのルート(より正確には力が作用するポイント)が表現されている。このトリガーは遊びを持つべきではない。そしてこのため我々はトリガーを少し動かす事なく力をOからAまで上げることができる。Aではトリガーシステムの停止状態の摩擦が克服され、より小さい力(B)でトリガーを動かし始めることができる。トリガーのさらなる動きのためには力を常に上昇させなければならない。というのはシステムはスプリングを含んでおり、これが進行するトリガールートとともにより強く圧縮されるからである。Cにおいてハンマーが解放される。打撃部品(ハンマー、ファイアリングピン)のレットオフに必要な力Fを我々はトリガー抵抗またはトリガー圧力と呼ぶ。打撃部品の解放によってコック部品と打撃部品の間の摩擦抵抗はなくなり(ここではルートCD)トリガーのさらなる動きに必要な力はDまで低下する。Eまでの軽い力の上昇がトリガーをストッパー位置(トリガーストップ)にもたらす。これはルートbを進んでしまった後のことである。トリガーストップはトリガーを大きな力によって引かれた際もさらに動かされないようにすることができる。



図2.11.1 あるトリガーの力・ルート・グラフ

 打撃部品のレットオフまでのルートaが短いと(0.2〜0.5mm)、人はこれをドライなトリガーと呼ぶ。よいリボルバーおよび非常によいピストルのトリガーはドライである。aがおよそ1〜2mmの長さであると、人はこれを緩慢なトリガーと呼ぶ。そのようなトリガーキャラクター(英語ではroll overと呼ばれる)も同様に正確な射撃を可能にする。望ましくない、そして不利なのは、BからCまでの力が単調に上昇せず、ピークを持っているトリガーである。そのようなトリガーを使っての射撃は非常に大きな注意と不必要な集中を要求する。よいスポーツ銃ではbはネジを使って調節可能であり、このためできるだけ小さいはずである。CからDまでの力の低下は一部構造に依存するものであり、同様に小さいことが望ましい。S&Wによって製造されるリボルバー、は非常に小さいC〜Dの値を示す。いくつかのスポーツピストル(ワルサー)も同様である。


 競技銃の場合原則としてトリガープルは軽い方が望ましく、またレットオフ後に長距離オーバーランしないことが望ましい、くらいのことはガンマニアの常識ですが、今回からこのトリガーの問題をより詳細、学術的に分析、解説する内容に入りました。

 まずは非常に分かりやすいグラフによるトリガープルの推移に関する説明です。Aに到達するまでの線が垂直になっているのはトリガーに遊びがないということであり、トリガーのリターンスプリングを圧縮しながら少し動いて初めてシアの抵抗に行き着くようなトリガーなら右上がりの線になるわけです。停止していたシアがAで動き始めるとプルはBまでわずかに低下します。この後Cに至るまでのルートaを通じてシアが動き続けます(実際にはその後も動き続けますが)。この距離が長いと銃が動揺しやすくなるので短いことが望ましいとされています。トリガーやシアを梃子のようにすればトリガープル自体は軽くできますが、それではこの距離(トリガーストローク)が大きくなってしまうわけで、難しいところです。Cでレットオフが起こり、シアとハンマーとの摩擦抵抗がなくなることでプルは一気にDまで低下します。この落差が大きいと銃の動揺が起きやすいのでこれも小さいことが望ましいとされています。トリガーやシアのリターンスプリングをやたらと強めれば相対的に落差を小さくすることはできるもののそれではまずいわけで、レットオフに必要なプルを極力小さくしながらこの落差をも小さくするというのは現実的には困難でしょう。今のところ私にはシアとハンマーの接点を磨き上げて摩擦抵抗を減らすくらいしか有効な方法が思いつきません。レットオフ後トリガーはEまで動きますが、トリガーストップの調節によってこのルートbは最小限にできます。Eに到達するとトリガーはいくら力を入れても動かなくなり、プルが理論上無限大になるということで垂直に上に向かう線として表現されています。

 「よいリボルバーおよび非常によいピストルのトリガーはドライである」という記述があります。これは別の言い方をすればリボルバーよりオートピストルの方が競技向けの良いトリガーにしにくいということです。これはたいていのリボルバーではトリガーが直接シアの役割を果たしているのに対し、オートピストルではトリガー→トリガーバー→シアというような間接的な力の伝達になり、その分パーツ間の微妙な遊びや弾性などによってルートaが長くなりやすいからでしょう。トリガー→トリガーレバー→シアレバー→シアというさらに間接的な力の伝達になるブローニングハイパワーのトリガープルが競技に向かないものであるとされるのもこの理由からだと思われます。またトリガーからシアまでを非常に長いワイヤー状の部品等で結合したブルパップライフルもトリガーフィーリングが悪くなりやすいとされています。

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