「ワリヤーグ」戦力化にはまだ5〜8年が必要?

 ごく短かった第10回航海試験前に書かれたものですが、「ワリヤーグ」の今後の見通しに関する意見です。

http://mili.cn.yahoo.com/ypen/20120820/1261081.html


ワリヤーグ、艦載機発着を完成 戦力形成にはまだ5〜8年が必要

「『ワリヤーグ』今年9月に就役」の情報は、少しばかりの主観的期待が混ざって急速に広がっている。だが、「今後空母はまだ科研試験と訓練を継続して行う必要があり、後続の作業は科研試験と訓練作業の状況に基づいて確定されることになる。万里の長城は1日では建設できない。皆さんが理性的、客観的にこの問題を見守ることを希望する」と、解放軍全装備総合計画部総合局副局長林柏上佐の先日のある談話は、このホットな推測をややクールダウンさせた。

南方日報記者は、現在の世界の主要空母の、第1回航海試験から正式就役、さらに戦力形成までの時間を調べ集め、これらの空母の「成長過程」を研究し、かつこれにより見えてくるルールに基づき、空母の進水から戦闘力形成までは間違いなく非常に長い過程であると気付いた。研究専門家李傑は、もし「ワリヤーグ」が今年就役しても、国際的経験に基づき、戦闘力形成にはなお5〜8年を必要とする、すなわち2017〜2020年にやっと戦闘力を形成できると判断している。

航海試験から就役まで、一般に3年を要する

「空母は、試験航海から就役まで一般に3年以内の時間を必要とする。」 空母研究の専門家李傑上校は言う。西側の軍事界には1つの視点がある。すなわち「陸軍30年、空軍50年、海軍100年」というものである。空母は現代の強大な海軍の支柱であり、その練成、強大な戦闘力形成には多くの関門を通過する必要がある。すなわち建造、進水、艤装、試験航海、改良、就役、戦闘群建設‥‥、単に試験航海と言っても3つの大きな段階を経る必要がある。すなわち、建造と改装時期の『工場試験航海』、部隊就役前の『就役前試験航海』、最後の全体的空母艦隊戦力整備完成前の『艦隊試験航海』」である。

統計によれば、現在全世界に全部で20隻の現役空母がありこのうちアメリカが11隻を占めている。世界各国の空母成長の道を研究、比較することにより、我々は「ワリヤーグ」が就役し戦闘力を形成するのに経ねばならない過程を大雑把に分析して出せるかもしれない。統計を通じて記者は、空母は一般に試験航海から就役までに1〜3年の時間を経る必要があるのに気付いた。これも李傑の説を裏付ける。

戦後のアメリカ空母の発展はフォレスタル級大型空母から始まった。建造開始が最も早い「フォレスタル」号を例にとると、この艦は1952年に建造が開始され、2年半後、すなわち1954年末に試験航海し、さらに1年過ぎずに、すなわち1955年10月に就役した。

1956年、アメリカは「キティホーク」号空母の建造を開始し、3年半をかけた。進水、試験航海から就役まで1年の時間を使った。その後の数隻の「キティホーク」級空母の建設速度は徐々にスローダウンしたが、2年半後には試験航海から就役までは通常1年余りしかかからなかった。だがニミッツ級大型原子力空母建造の時は状況がやや異なった。このクラスの空母は現在世界でトン数が最大の原子力空母であり、満載排水量は10万トン前後に達する。このクラスの第1号艦「ニミッツ号」は試験航海から就役まで3年の時間を使い、その後建造された9隻の空母は「アブラハム リンカーン」号が1年9カ月の時間を使ったのを除けば、その他は全て2〜3年の時間を使った。

現在公開されている資料は、「ワリヤーグ」号はニミッツ級大型原子力空母のようにトン数が大きくはなく、その満載排水量は「フォレスタル」級に比べてもさらに1万トン余り少ないことをはっきり示している。艦載機の数で見ると、「ニミッツ号」には86機の艦載機、航空機を攻撃することも敵を迎撃することもできる巡航ミサイル、2台の核反応炉、8台の8,000ワットガスタービン発電機、SPS-48E 3D対空捜索レーダーなど先進的装備を持つ。一方「ワリヤーグ」は中型通常動力空母に過ぎず、原子力空母ではない。総合的に分析すれば、その技術的難度はニミッツ級より低く、このことは、もし正常ならその試験航海時間として2、3年を使うはずはないことをも一定程度決定する。

だが、極端な例がないでもない。スペイン初の空母である「アストゥリアス王子」号を例に取ると、この艦は1982年5月22日に進水したが、6年後の1988年5月30日にやっと海軍に編入され就役した。この過程が無駄に長引いたのは、指揮コントロールシステムに不断の改良を行う必要があったこと、そして司令艦橋を追加して指揮艦担当の必要を満足させるためだった。

だが今年の全国両会(頑住吉注:全国人民代表大会と中国人民政治協商会議)第2回全体会議で、海軍副司令員徐洪猛は、「ワリヤーグ」号の航海試験は非常に順調で、今年就役の計画があることを明らかにした。ここから判断すると、「ワリヤーグ」号は正常な技術的進度で航海試験を完成させていることになる。

艦載機の発着が重要なカギ

空母建造の速い遅いと、その国の軍事工業技術レベルには大きな関係があるし、技術的熟練度とも関係がある。同クラスの空母では、第1隻目の製造にかかる時間は一般に、やはり後の空母に比べ長くなる。だがそれぞれの空母が経る必要のある試験は同じである。

「空母の試験航海には主に航行試験と航空試験が含まれる」と李傑は言う。航行試験は主に航行の品質を検証し、同時に実際の航行の中で存在する可能性のある問題に気付くためでもある。空母に設計上の問題が存在するか否か、海上の波浪の影響に抗し得るか否か、就役の条件を具備しているか否か‥‥試験航行中に獲得されたデータは空母の改良、向上の重要なカギの在りかであり、空母の生存能力、作戦能力の発展と向上に対し重要な作用を持つ。「ワリヤーグ」の数回の航海試験では常に牽引船を採用し、指定の海域に牽引し到達してから訓練が行われており、この艦が何らかの種類の動力システムを使用したと証明する確実な情報はない。動力は空母の足であり、駆動力量が優良であるか否かは、空母の航続距離と航行速度に直接影響する。最優秀の動力システムは解決が得られているのか否か? もし解決されていれば、動力システムの試験にも時間をかける必要がある。

航空試験はさらに重要である。「空母は実は、『航空』と『母艦』の組み合わせであり、強大な艦載機がなければもう空母になることは難しい。」と李傑は言う。このため、実戦機と空母の密接なマッチングが完成し得るか否かにとって、艦載機発着訓練は明らかに非常に重要である。この訓練は主に艦載機の空母接近試験、艦載機着陸模擬試験、着艦試験、発進試験、艦載機重量積載試験などからなる。

「実は甲板の航空設備が艦載機とマッチングして各種試験を行えるか否かなのだ」と軍事専門家尹卓は言う。例えば、空母上の制動ケーブルが艦載機にマッチし、それの補助で降着に成功し得るか否か、甲板のカタパルトが各種の力量をうまくコントロールし、異なる重量の機を発射できるか否か、さらに甲板の長さが機の発着の要求に符合するか否か、改良を行う必要があるか否か‥‥これらは全て航海試験中にテストする必要がある。「何故なら埠頭では空のクリアさの条件が不充分で、そこでの発着は艦載機に対し脅威を構成するからである。」と尹卓は言う。

それぞれの空母大国も航空試験を極めて重視している。真正で完璧な戦闘発着を実現するため、スホーイ-27Kは80回の飛行試験を完了して受領され、ミグ-29Kは74回の着艦試験と13回の試験飛行を完了して受領されている。フランスの「ドゴール」号は航海試験によって多くの設計の不合理な場所が発見され、飛行甲板が4m延長されることになった。

この他、人的要素も艦載機の重要なカギである。アメリカのシンクタンクであるジェームスタウン基金会は、空母の任務執行は相当程度海上の空中戦力に頼っており、艦載機の飛行員は空母上で発着をスムーズに行う前に長期の訓練を行う必要があると考えている。各国は往々にして、「まず陸地、その後海上」の方式で訓練を行う。アメリカは多数の艦載機飛行員を抱えており、多くの地上基地と十隻余りの空母を発着訓練に供することができる。さらにもう1セットの海軍将兵を成熟させる訓練模式があり、空母の建造期に彼らはもうこれに加わって作業するのである。だがこのようにすると、アメリカ空母は就役後、依然2、3年以内の時間を必要とし、それでやっと戦闘力を形成できることになる。

就役は戦闘力の形成を表さない

もし「ワリヤーグ」号の航海試験が全部成功しても、それはこの艦がすでに戦闘力を備えたことを意味しない。この艦はさらに海軍のテストを受けて受領される必要があり、その後空母はやっと正式に部隊に引き渡されて就役することができるのである。だが、部隊への引き渡しもこの艦がすぐに前線の作戦に行けること、真の戦闘力を形成したことを意味しない。就役から戦闘力形成まではどのくらいを要するのか? 李傑は1つの数字を出してくれた。「一般に国際的規律と慣例に従えば、5〜8年の時間を要する。」

この5〜8年の時間内に空母をめぐって全部で何をする必要があるのか?

空母は決して単独行動することはなく、空母戦闘群を形成する必要があり、これでやっと行動できる。これらの随伴船舶には巡洋艦、駆逐艦、護衛艦等々が含まれる。それらは空母のために対空および対その他の船舶、そして潜水艦からの保護を提供する。この他、艦隊の中にはさらに潜水艦があって偵察、対潜任務を行い、そして供給艦艇やタンカーがいて、もって艦隊全体の活動範囲を拡大する。

アメリカ海軍空母は任務執行時、一般に4〜8隻の水上作戦艦艇、1〜2隻の潜水艦、1〜2隻の後方勤務補助艦船が配属され、空母戦闘群を組成する。これには2隻のミサイル巡洋艦、2隻の駆逐艦、1隻の護衛艦、2隻の原子力攻撃型潜水艦、1隻の補給艦が含まれる。具体的任務に基づき、さらに兵員輸送船、揚陸艇、貨物船が追加配備される可能性がある。その他の国の海軍空母艦隊の構造はそれぞれに違いがあるが、いずれも一連の核心戦力が組み込まれる。これらの戦力には空中防御、対潜作戦、対地攻撃を実施する巡航ミサイルが含まれる。

武器システム方面では、我が国はまだ艦載機、対潜機、空母自身の防御武器システムの確実な情報をを公開していない。殲-15は搭載できるのか否か、相応の対潜機はあるのか否か? 訓練の慣らし運転の状況はどうか? これらの問題は空母がいつ就役するかに直接影響する。

現代空母は動力システム、発着およびカタパルトシステム、艦載機、艦用武器システム、通信指揮システム、早期警戒プラットフォームなど一連の非常に複雑なサブシステムが一体に集まり、完備された海上作戦プラットフォームを組成したものである。大型水上艦艇として、引き渡されて科研、試験、訓練に使用された後、艦上の各種装置、電子システム、武器システムなどにテストが必要なだけでなく、軍艦内部の各システム間のすり合わせ、艦隊の中の他の艦艇との共同訓練、艦載機飛行員の訓練、艦・機協同などにも、完了にはいずれも比較的長い時間が必要である。「もしアメリカ海軍のように非常に成熟した空母使用者でも、1隻の新空母が戦闘力を形成するにはやはり2〜3年の時間を必要とする。かつて空母を持ったことが全くない中国海軍に関して言えば、これは1つの巨大なチャレンジであって、過程もより長くなろう。」李傑は言う。

2011年8月10日 初の出航

当時のある分析は、中国空母は艦載機の離着艦試験を行う可能性があると推測していた。8月14日午前、空母は牽引船に牽引され大連造船工場の東、約1.5kmに至り、帰投に成功した。理解されているところによれば、この回は主にまだ空母に対し基礎的試験が行われ、空母に対し初歩的航行コントロール能力および各部分の浸水状況に対し検査が行われた。

2011年11月29日 再度出航

第2回目に海に出た時は、空母の甲板上にはすでに機の着艦区域と離艦区域を示すマーキングの線があった。だが空母と艦載機の合同訓練は行われず、艦載機の海上適応性訓練が行われただけで、12月11日午前に帰港した。

2011年12月20日 第3回航海試験

12月29日に戻り、10日が経過していた。この回の航海試験期間、空母上の制動ケーブルのネット仲間に撮影された画像が明るみに出、このため専門家は、この回の航海試験で艦載機の発着試験が行われた公算が高いと分析した。

2012年1月8日 第4回航海試験

1月15日に戻り、8日が経過。

2012年4月20日 第5回航海試験

4月30日に戻り、11日が経過。

2012年5月7日 第6回航海試験

5月15日に戻り、9日が経過。

2012年5月23日 第7回航海試験

6月1日に戻り、10日が経過。

2012年6月8日 第8回航海試験

6月22日に戻り、15日が経過。ある分析は、「ワリヤーグ」号空母の第5回から第8回航海試験は、時間間隔がどんどん短くなり、このように密集した航海試験はこの試験がすでに常態化し、科研訓練も比較的順調だと考えた。

2012年7月5日 第9回航海試験

中国空母の第9回目の海に出ての試験。7月30日に戻り、25日が経過。分析専門家は、中国はすでに艦載機の発着試験を完了させ、空母はすでにとりあえずの戦闘力を備えたと判断した。


 初の空母を持つということで高揚し、先走った見方が多い中、抑制的な意見なのですが、ところどころそれでも希望的観測に走っているような部分が見受けられます。空母上に確認されているのは艦載機の模型らしきもので、私は状況的に離発着訓練は基本的にまだ行われていない可能性が高いと思います。また、出発、帰還時に常にタグボートで引かれているというのも気になります。この記事には「この艦が何らかの種類の動力システムを使用したと証明する確実な情報はない」と書かれていますが、コラムで紹介した記事には「主動力機関が轟音を上げ始め〜見送る牽引船に別れを告げ、大海へと出て行った」という記述があり、自力で動けないことはないはずですが、充分な機動性はない疑いが濃い気がします。









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